こんにちは。救急救命士学習塾の空飯です。
この記事では、救急救命士国家試験の「妊婦・分娩」分野の問題を10問まとめました。
並び順は適当ではありません。第45回〜第49回(過去5年分)の国家試験を1問ずつ分析し、類題が多く出ているテーマから順番に並べています。上から解いていけば、出やすいところから効率よく得点力がつきます。
答えは各問題の下の「▼答えと解説を見る」を押すと開きます。まずは自力で解いてみてください。
▶ 他の分野の問題は救急救命士 国家試験の問題(分野別まとめ)から解けます。
妊婦・分娩は毎年どれくらい出る?
救急隊が出産に立ち会う機会は多くありませんが、母体と赤ちゃんの2人の命がかかる場面なので、国試では毎年しっかり出題されます。第45〜49回では、一般問題と状況設定問題をあわせて5年間に約20問、毎年4問前後出ています。
特に多いのは分娩の経過と介助、新生児の評価(アプガースコア)、そして妊娠・分娩に関わる出血です。「いつ」「何が起こるか」をセットで覚えましょう。
| 順位 | テーマ | 過去5年の類題数 |
|---|---|---|
| 1 | 分娩の経過と介助 | 約4問 |
| 2 | アプガースコア(新生児の評価) | 約3問 |
| 3 | 弛緩出血(分娩後の出血) | 約2問 |
| 4 | 常位胎盤早期剥離と妊娠高血圧症候群 | 約2問 |
| 5 | 仰臥位低血圧症候群 | 約2問 |
| 6 | 妊婦の外傷 | 約2問 |
| 7 | 異所性妊娠(妊娠初期の出血性ショック) | 約1問 |
| 8 | 妊娠による母体の変化 | 問題集830 |
| 9 | 子癇 | 問題集830 |
| 10 | 羊水塞栓 | 約1問 |
※類題数は当塾が第45〜49回のA〜D問題を分類して数えたものです(同数の場合は現場での重要度順)。生まれた後の新生児の保温やSpO2の目標値は小児・新生児の問題10選で扱っています。
【第1位】分娩の経過と介助(類題 約4問)
問題1 20歳の女性。腹痛と性器出血とを認め、本人が救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数20/分。脈拍92/分、整。血圧120/60mmHg。3分毎の強い腹痛を訴え、腹部は膨隆している。本人は妊娠していることを認識しているが、一度も医療機関を受診していないとのことである。本人からまず聴取すべき情報はどれか。1つ選べ。(第49回 午後D 問30)
- 喫煙
- 職業
- 手術歴
- 最終月経
- パートナーの有無
▼答えと解説を見る
答え:4. 最終月経
一度も受診していない妊婦なので、まず知りたいのは今が妊娠何週かです。それを知る手がかりが最終月経(の初日)です。月経周期が規則的なら、ネーゲレ概算法で分娩予定日(妊娠40週0日)が計算できます。
3分ごとの強い腹痛は陣痛の可能性があります。妊娠週数がわかれば、早産なのか正期産なのかを搬送先に伝えられます。
あわせて出るポイント(正常分娩の流れ):
- 第1期:陣痛開始(10分おき)〜子宮口が全開するまで
- 第2期:子宮口全開〜児の娩出まで。陣痛のときだけ児頭が見えるのが排臨、引っ込まなくなったら発露
- 第3期:児の娩出〜胎盤の娩出まで
- 児頭は母体の背中側を向いて出てきて、顔が出ると横を向く → 下に誘導して上側の肩、次に上に誘導して下側の肩を出す
【11版 p.661、p.663〜665】
【第2位】アプガースコア(類題 約3問)
問題2 30歳の女性。妊娠39週。自宅で陣痛が急激に強くなったため、夫が救急要請した。救急隊到着時、女性は居間で仰臥位で、両大腿の間にすでに児が出ている。夫によると、たった今生まれたところだという。児は四肢を活発に動かし、強く泣いている。羊水吸引器で鼻内を吸引したところ、さらに強く泣く。体幹皮膚は淡紅色だが、四肢の先にのみチアノーゼを認める。心拍数は136/分である。この時点の児のアプガースコアは何点か。1つ選べ。(第46回 午後D 問31)
- 10点
- 9点
- 8点
- 7点
- 6点
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答え:2. 9点
アプガースコアは5項目を各0〜2点でつけて合計します。
- 心拍数136/分(100以上)→ 2点
- 呼吸:強く泣いている → 2点
- 筋緊張:四肢を活発に動かす → 2点
- 反射:吸引でさらに強く泣く → 2点
- 皮膚色:体はピンクだが手足の先だけチアノーゼ → 1点
合計9点です。生まれた直後は手足の先が青いのはよくあることで、全身ピンクでないと2点にはなりません。
あわせて出るポイント:評価は生後1分と5分の2回。7点以上が正常、3点以下は重症仮死。評価項目にSpO2は入りません。
【11版 p.672】
【第3位】弛緩出血(類題 約2問)
問題3 38歳の女性。自宅で出産し、本人が救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数24/分。脈拍104/分、整。血圧104/60mmHg。体温36.8℃。SpO2値99%。新生児は元気に泣いていて状態は安定している。胎盤も娩出されていたため、臍帯の2か所を臍帯クリップで挟み、その間を切断した。本人は痛みの訴えはなく、会陰の裂傷もないものの、腟口から中等量の出血が持続している。考えられるのはどれか。1つ選べ。(第47回 午後D 問30)
- 弛緩出血
- 子宮内反
- 子宮破裂
- 腟壁血腫
- 羊水塞栓
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答え:1. 弛緩出血
ふつう分娩が終わると、子宮がギュッと縮んで胎盤がはがれたところの血管を押さえ、出血は止まります。この子宮の収縮が悪いために、胎盤が出たあとも出血が続くのが弛緩出血です。痛みがないのも特徴です。
- 子宮内反・子宮破裂 → 激しい腹痛がある
- 羊水塞栓 → 突然の呼吸困難と血圧低下
- 腟壁血腫 → 裂傷がなければ出血が続くとは考えにくい
あわせて出るポイント:弛緩出血に最も注意する時期は分娩終了直後(第45回 午前A 問73)。救急隊は子宮の輪状マッサージをしながら搬送します。
【11版 p.668】
【第4位】常位胎盤早期剥離と妊娠高血圧症候群(類題 約2問)
問題4 常位胎盤早期剥離を合併しやすいのはどれか。1つ選べ。(第45回 午前A 問84)
- 胞状奇胎
- 切迫早産
- 前期破水
- 妊娠糖尿病
- 妊娠高血圧症候群
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答え:5. 妊娠高血圧症候群
常位胎盤早期剥離は、正しい位置にある胎盤が、赤ちゃんが生まれる前に子宮の壁からはがれてしまう病気です。妊娠高血圧症候群の妊婦に起こりやすく、外傷でも起こります。
- 母体:突然の強い腹痛、子宮が板のように硬くなる(板状硬)、出血性ショック、DIC
- 胎児:酸素が届かなくなり、命の危険
母子ともに緊急度が非常に高く、緊急帝王切開の対象です。
あわせて出るポイント:妊娠後期の血圧上昇+頭痛は妊娠高血圧症候群を疑うサイン(母子健康手帳では血圧の推移に注目)。
【11版 p.666】
【第5位】仰臥位低血圧症候群(類題 約2問)
問題5 バックボード固定されている妊娠後期の外傷傷病者において、血圧が下がった場合の適切な対応はどれか。1つ選べ。(第47回 午前A 問110)
- 右に傾ける。
- 左に傾ける。
- 頭側を高くする。
- 頭側を低くする。
- 腰部のベルトを外す。
▼答えと解説を見る
答え:2. 左に傾ける。
妊娠後期の妊婦を仰向けにすると、大きくなった子宮が体の右側を通る下大静脈を押しつぶし、心臓に戻る血液が減って血圧が下がります。これが仰臥位低血圧症候群です。
対策は左側臥位。全身固定中ならバックボードごと左に15〜30°傾けます。右に傾けると、かえって下大静脈の圧迫が強くなります。
あわせて出るポイント:妊婦の搬送体位は左側臥位(ショック体位・起坐位ではない)。
【11版 p.669、p.756】
【第6位】妊婦の外傷(類題 約2問)
問題6 妊娠後期の妊婦が腹部に外力を受けることで発症するのはどれか。1つ選べ。(第47回 午前A 問91)
- 子癇
- 頸管裂傷
- 前置胎盤
- HELLP症候群
- 常位胎盤早期剥離
▼答えと解説を見る
答え:5. 常位胎盤早期剥離
妊娠後期の妊婦がお腹を打つと、比較的弱い力でも胎盤がはがれることがあります。強い力なら子宮破裂も起こります。交通事故では、シートベルトの腰ベルトが子宮を圧迫することも原因になります。
妊婦の外傷で注意すること:
- 横隔膜が押し上げられ、酸素消費も多い → 低酸素になりやすいので早めに酸素
- 循環血液量が30〜40%増えている → 出血してもショック症状が出にくい
- 胃の内容物が残りやすい → 誤嚥に注意
- 仰臥位低血圧症候群 → 左に傾けて搬送
【11版 p.756】
【第7位】異所性妊娠(類題 約1問)
問題7 出血性ショックを来す病態はどれか。1つ選べ。(第46回 午前A 問84)
- 子癇
- 切迫早産
- 異所性妊娠
- HELLP症候群
- 妊娠高血圧症候群
▼答えと解説を見る
答え:3. 異所性妊娠
異所性妊娠は、受精卵が子宮以外(ほとんどが卵管)に着床するものです。妊娠初期に卵管が破裂すると腹腔内に大出血し、出血性ショックになります。
出血性ショックを起こす代表は、妊娠初期=異所性妊娠、妊娠中期以降=前置胎盤・常位胎盤早期剥離と覚えましょう。
あわせて出るポイント:若い女性の急な下腹部痛+ショック+月経の遅れは異所性妊娠を疑います。
【11版 p.665】
【第8位】妊娠による母体の変化(問題集830)
問題8 妊娠による母体の変化について正しいのはどれか。2つ選べ。(問題集830より)
- 心拍出量は低下する。
- 横隔膜が上昇し機能的残気量が増加する。
- 血液凝固能が低下する。
- 循環血漿量が増加する。
- 顔面、乳頭などに色素沈着がみられる。
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答え:4と5
妊娠すると、赤ちゃんに血液を送るために循環血漿量が増え、心拍出量も増加します。ホルモンの影響で顔や乳頭に色素沈着も起こります。
- 1. 心拍出量は増加する
- 2. 横隔膜が上がるので、機能的残気量は減少する(だから低酸素になりやすい)
- 3. 分娩の出血に備えて、血液凝固能は亢進する(血栓ができやすい)
あわせて出るポイント:月経周期28日型の排卵日は最終月経初日から約2週間後。
【11版 p.661、p.663】
【第9位】子癇(問題集830)
問題9 子癇について正しいのはどれか。2つ選べ。(問題集830より)
- 妊娠初期に発症する。
- 光刺激は発作を誘発する。
- 発作中の胎児の酸素化は保たれる。
- 意識レベルの確認は、大声で呼びかけたり揺さぶったりする。
- 発作前に頭痛や目がチカチカすると訴えることがある。
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答え:2と5
子癇は、妊娠20週以降に初めて起こる痙攣発作で、てんかんなど他の原因がないものです。妊娠高血圧症候群に合併しやすく、発作の前に頭痛や目がチカチカする(眼華閃発)と訴えることがあります。
- 1. 妊娠20週以降に起こる
- 3. 発作中は母体の呼吸が乱れ、胎児も低酸素になる危険がある
- 4. 光・音・揺さぶりなどの刺激は発作を誘発するので、車内を暗く静かにし、刺激を避ける
【11版 p.666】
【第10位】羊水塞栓(類題 約1問)
問題10 分娩中の突然の呼吸困難と血圧低下とが典型的症候である疾患はどれか。1つ選べ。(第48回 午前A 問89)
- 弛緩出血
- 子宮内反
- 子宮破裂
- 前置胎盤
- 羊水塞栓
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答え:5. 羊水塞栓
羊水塞栓は、羊水やその中の胎児成分が母体の血液に入り込み、分娩中や分娩直後に突然の呼吸困難・血圧低下・意識障害を起こす病気です。DICも起こし、妊婦死亡の主な原因の1つです。
弛緩出血・子宮内反・子宮破裂・前置胎盤は、どれも性器出血が中心で、呼吸困難が主な症状ではありません。
あわせて出るポイント(時期で整理):
- 妊娠初期:流産・異所性妊娠・胞状奇胎
- 妊娠中期以降:早産・前期破水・前置胎盤・常位胎盤早期剥離
- 分娩後:弛緩出血・子宮破裂・子宮内反
【11版 p.665〜668】
妊婦・分娩の要点まとめ
| テーマ | これだけは覚える |
|---|---|
| 分娩の経過 | 第1期=陣痛〜子宮口全開、第2期=〜児娩出(排臨→発露)、第3期=〜胎盤娩出。上側の肩から出す |
| 未受診の妊婦 | まず最終月経を聞いて妊娠週数を推定 |
| アプガースコア | 心拍・呼吸・筋緊張・反射・皮膚色。1分後と5分後。7点以上正常・3点以下重症仮死 |
| 弛緩出血 | 分娩終了直後、痛みのない出血が続く。子宮の輪状マッサージ |
| 常位胎盤早期剥離 | 妊娠高血圧症候群・腹部外傷で起こる。強い腹痛・板状硬・ショック・DIC |
| 仰臥位低血圧 | 子宮が下大静脈を圧迫。左側臥位、バックボードは左に15〜30° |
| 妊婦の外傷 | 低酸素になりやすい・ショック症状が出にくい・誤嚥に注意 |
| 異所性妊娠 | 妊娠初期の出血性ショック。下腹部痛+月経の遅れ |
| 母体の変化・子癇 | 循環血漿量・心拍出量↑、機能的残気量↓、凝固能↑。子癇は20週以降・刺激を避ける |
| 羊水塞栓 | 分娩中・直後の突然の呼吸困難と血圧低下 |
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