こんにちは。救急救命士学習塾の空飯です。
この記事では、救急救命士国家試験の「脳・神経」分野の問題を10問まとめました。
並び順は適当ではありません。第45回〜第49回(過去5年分)の国家試験を1問ずつ分析し、類題が多く出ているテーマから順番に並べています。上から解いていけば、出やすいところから効率よく得点力がつきます。
答えは各問題の下の「▼答えと解説を見る」を押すと開きます。まずは自力で解いてみてください。
▶ 他の分野の問題は救急救命士 国家試験の問題(分野別まとめ)から解けます。
脳・神経は毎年どれくらい出る?
脳・神経は、国家試験で最も出題数が多い分野のひとつです。第45〜49回を数えると、脳・神経に関わる問題は毎年およそ12〜15問出ています。
特に脳卒中(くも膜下出血・脳出血・脳梗塞)と痙攣は、A・B問題の知識問題にもD問題の事例にも毎年出ます。「どの病気で、どんな症状が出て、どこへ運ぶか」をセットで覚えるのがコツです。
| 順位 | テーマ | 過去5年の類題数 |
|---|---|---|
| 1 | くも膜下出血と危険な頭痛 | 約9問 |
| 2 | 脳出血の部位と症状 | 約8問 |
| 3 | 痙攣・てんかん | 約7問 |
| 4 | 脳ヘルニア | 約6問 |
| 5 | 脳梗塞の種類 | 約5問 |
| 6 | めまい・失神 | 約5問 |
| 7 | 神経の病気(パーキンソン病など) | 約4問 |
| 8 | 頭蓋内圧亢進とクッシング徴候 | 約4問 |
| 9 | 一過性脳虚血発作(TIA) | 約3問 |
| 10 | 脳梗塞の血栓溶解療法 | 約3問 |
※類題数は当塾が第45〜49回の問題を分類して数えたものです(事例問題も含みます)。頭部外傷(急性硬膜外血腫など)は外傷の問題10選で扱っています。JCS・GCSなど意識レベルの評価は「観察・バイタルサイン」の記事でまとめる予定です。
【第1位】くも膜下出血と危険な頭痛(類題 約9問)
問題1 頭痛の訴えの中で最も緊急度が高いのはどれか。1つ選べ。(第49回 午前A 問65)
- 「仕事終わりの夕方に眼の奥が痛くなりました。」
- 「首の付け根から側頭部へビーンと痛くなりました。」
- 「痛みは波があり、強くなったり弱くなったりしました。」
- 「トイレでいきんだ時に突然の頭痛があり嘔吐しました。」
- 「頭全体がギューッとしめつけられるような痛みが起こりました。」
▼答えと解説を見る
答え:4.「トイレでいきんだ時に突然の頭痛があり嘔吐しました。」
頭痛の緊急度で一番大事なのは「突然かどうか」です。「いきんだ瞬間」「〇時〇分に」と発症したときの状況をはっきり言える頭痛は、突然発症のサインです。
- 突然の激しい頭痛+嘔吐 → まずくも膜下出血を疑う(「バットで殴られたような」「今まで経験したことのない」頭痛)。
- 5の「しめつけられる」は緊張型頭痛、2は神経痛のような痛みで、緊急度は高くありません。
あわせて出るポイント(くも膜下出血):
- 原因の多くは脳動脈瘤の破裂。女性にやや多い。
- 項部硬直は発症直後には出にくい(数時間〜1日たってから目立つ)。
- 再出血は発症後24時間以内(特に6時間以内)に多い → 血圧を上げる刺激(痛み・興奮)を避けて静かに搬送。
【11版 p.492〜494】
【第2位】脳出血の部位と症状(類題 約8問)
問題2 脳出血で下方共同偏視となることが多い病変部位はどこか。1つ選べ。(第49回 午前A 問75)
- 脳幹
- 小脳
- 被殻
- 視床
- 皮質下
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答え:4. 視床
脳出血は場所によって目の向き(共同偏視)が変わるので、ここが毎年のように問われます。
| 出血部位 | 特徴的な症状 |
|---|---|
| 被殻(いちばん多い) | 反対側の片麻痺、病巣側をにらむ共同偏視 |
| 視床 | 反対側の感覚障害、下方(鼻先をのぞく)共同偏視 |
| 橋(脳幹) | 突然の昏睡、両側の著しい縮瞳、四肢麻痺 |
| 小脳 | 激しいめまい・嘔吐、歩けない(運動失調)、麻痺は目立たない |
| 皮質下 | 出血の場所に応じた症状(失語など)、病巣側への共同偏視 |
【11版 p.321】
【第3位】痙攣・てんかん(類題 約7問)
問題3 痙攣の傷病者で、重積状態と判断すべき所見はどれか。1つ選べ。(第49回 午前A 問62)
- 尿失禁している。
- 眼球が上転している。
- おさまった後すぐ繰り返す。
- 強直性から間代性へ移行する。
- 停止後も片麻痺が続いている。
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答え:3. おさまった後すぐ繰り返す。
ふつうの痙攣は1〜2分で止まります。次のどちらかなら痙攣重積状態として急ぎます。
- 痙攣が5分を超えて続く
- 発作をくり返し、その間に意識が戻らない
1・2は全身痙攣の発作中によくみられる症状、4はふつうの強直間代痙攣の経過です。5は痙攣のあとに一時的に出る麻痺(トッド麻痺)で、重積とは別のものです。
あわせて出るポイント:強直間代痙攣の発作中は交感神経が緊張して散瞳・頻脈・血圧上昇、筋肉が激しく動くので体温も上がります。発作後は気道確保(舌根沈下・嘔吐)を最優先に観察します。
【11版 p.497、500】
【第4位】脳ヘルニア(類題 約6問)
問題4 鉤回ヘルニアの進行に際して最も早期に観察されるのはどれか。1つ選べ。(第45回 午前A 問46)
- 瞳孔不同
- 除脳肢位
- 血圧低下
- 弛緩性四肢麻痺
- チェーン・ストークス呼吸
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答え:1. 瞳孔不同
鉤回ヘルニアは、側頭葉の内側(鉤回)がはみ出して中脳のわきに入り込むヘルニアです。そこで最初に押されるのが動眼神経なので、まず病変側の瞳孔が開きます(瞳孔不同)。
- 進行すると、意識障害の悪化 → 除皮質・除脳肢位 → 呼吸の乱れ → 両側散大へと進みます。
- 血圧は下がるのではなく、むしろ上がる(クッシング徴候、問題8)。下がるのは最終段階です。
「瞳孔不同が出た」=脳ヘルニアが始まっているサイン。現場で見つけたらすぐに医療機関の選定と搬送を急ぎます。
【第5位】脳梗塞の種類(類題 約5問)
問題5 穿通枝の閉塞によって生じる脳梗塞はどれか。1つ選べ。(第48回 午前A 問83)
- ラクナ梗塞
- 心原性脳塞栓
- 静脈洞血栓症
- 一過性脳虚血発作
- アテローム血栓性脳梗塞
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答え:1. ラクナ梗塞
脳梗塞は3つのタイプで覚えます。
| タイプ | どこが詰まる? | 特徴 |
|---|---|---|
| ラクナ梗塞 | 脳の奥の細い血管(穿通枝) | 梗塞は小さい。意識障害は少なく、症状は軽め |
| アテローム血栓性 | 太い血管(動脈硬化) | 段階的に悪くなることがある。前ぶれにTIA |
| 心原性脳塞栓 | 心臓でできた血栓が飛ぶ | 心房細動が原因。突然発症で重症になりやすい |
心房細動と脳塞栓は心電図・ショックの問題10選でも出題しています。
【11版 p.546〜547】
【第6位】めまい・失神(類題 約5問)
問題6 失神性めまいの原因疾患はどれか。1つ選べ。(第46回 午前A 問63)
- 小脳出血
- 前庭神経炎
- 突発性難聴
- 起立性低血圧
- メニエール病
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答え:4. 起立性低血圧
めまいは3種類に分けて考えます。
- 失神性めまい(目の前が暗くなる・気が遠くなる):脳の血流が一時的に減る → 起立性低血圧、血管迷走神経反射、排尿後、徐脈性不整脈、出血など
- 末梢性めまい(耳が原因、ぐるぐる回る):前庭神経炎、突発性難聴、メニエール病
- 中枢性めまい(脳が原因):小脳出血・小脳梗塞、脳幹の障害 → 立てない・歩けない・構音障害を伴う。いちばん危険
めまいの傷病者では「手足の麻痺・しびれ、ろれつ、歩けるか」を確認して、中枢性を見逃さないことが大切です。
【第7位】神経の病気(パーキンソン病など)(類題 約4問)
問題7 パーキンソン病の症候に特徴的なのはどれか。1つ選べ。(第46回 午前A 問73)
- 痙笑
- 筋萎縮
- 後傾姿勢
- 呼吸筋麻痺
- 歯車様固縮
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答え:5. 歯車様固縮
パーキンソン病は、脳の神経がゆっくり減っていく中枢神経の変性疾患です。代表的な症状は次のとおりです。
- 安静時振戦(じっとしているときに手がふるえる)
- 筋固縮(関節を動かすとカクカク抵抗がある=歯車様固縮)
- 動作が遅い、小きざみ歩行、前かがみの姿勢(3の「後傾」ではない)、仮面様顔貌
1の痙笑は破傷風、2の筋萎縮は筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、4の呼吸筋麻痺はギラン・バレー症候群や重症筋無力症でみられます。
【第8位】頭蓋内圧亢進とクッシング徴候(類題 約4問)
問題8 クッシング徴候はどれか。2つ選べ。(問題集830より)
- 徐脈
- 発熱
- 意識障害
- 血圧上昇
- 項部硬直
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答え:1. 徐脈 と 4. 血圧上昇
頭の中の圧(頭蓋内圧)が急に上がると、脳に血液を送ろうとして血圧が上がり、その反射で脈が遅くなります。これがクッシング徴候です。
- 原因:脳出血・くも膜下出血、髄膜炎・脳炎、頭部外傷など
- 「血圧が高いのに脈が遅い」+意識障害 → 脳ヘルニアが迫っている危険なサイン
ショックでは「血圧が低く脈が速い」ので、ちょうど逆の組み合わせと覚えると混乱しません。
【11版 p.494】
【第9位】一過性脳虚血発作(TIA)(類題 約3問)
問題9 一過性脳虚血発作について正しいのはどれか。1つ選べ。(問題集830より)
- 脳組織の壊死を伴う。
- 脳梗塞の前駆症状である。
- 意識障害を伴うことが多い。
- CT検査で病変が認められる。
- 心原性血栓の塞栓により発症することが多い。
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答え:2. 脳梗塞の前駆症状である。
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳の血流が一時的に悪くなり、麻痺やしびれ・ろれつ障害などが出て、24時間以内(多くは数分〜数十分)に完全に消える発作です。
- 症状が消えても「近いうちに脳梗塞が起こる前ぶれ」。救急隊到着時に症状が消えていても、脳卒中に対応できる医療機関への受診が必要です。
- 1・4:脳は壊死しておらず、画像で病変は見つからないのが原則。
- 3:意識障害はまれ。5:動脈硬化によるものが多い。
【11版 p.547】
【第10位】脳梗塞の血栓溶解療法(類題 約3問)
問題10 脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応となるのは、発症から何時間以内とされるか。1つ選べ。(第45回 午前A 問97)
- 1.5時間
- 3.0時間
- 4.5時間
- 6.0時間
- 7.5時間
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答え:3. 4.5時間
血栓を溶かす薬(t-PA)は、発症から4.5時間以内が適応です。太い血管が詰まった場合は、カテーテルで血栓を取り出す血栓回収療法も考慮されます。
だからこそ救急隊は、次の情報をすばやく確実に集めて、脳卒中に対応できる医療機関を選びます。
- 発症時刻(=最後に元気だった時刻。寝ていて朝気づいた場合は、寝る前の時刻)
- 既往歴・内服薬(特に抗凝固薬)
- 麻痺・言語障害など脳卒中の症状
脳・神経の要点まとめ
| テーマ | これだけは覚える |
|---|---|
| くも膜下出血 | 突然の激しい頭痛+嘔吐。動脈瘤破裂。項部硬直は遅れて出る。再出血に注意 |
| 脳出血の部位 | 被殻=病巣側をにらむ/視床=下方/橋=縮瞳/小脳=めまい・歩けない |
| 痙攣重積 | 5分以上続く、またはくり返して意識が戻らない |
| 脳ヘルニア | 鉤回ヘルニアは動眼神経が圧迫 → まず瞳孔不同 |
| 脳梗塞の種類 | ラクナ=穿通枝/アテローム=動脈硬化/心原性=心房細動 |
| めまい | 失神性(血圧低下・徐脈)/末梢性(耳)/中枢性(小脳・脳幹)が危険 |
| パーキンソン病 | 安静時振戦・歯車様固縮・小きざみ歩行・前傾姿勢 |
| クッシング徴候 | 血圧上昇+徐脈=頭蓋内圧亢進 |
| TIA・血栓溶解 | TIAは脳梗塞の前ぶれ。t-PAは発症4.5時間以内 → 発症時刻を確認 |
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問題8・9は、塾で使っている「問題集830」からの出題です。テキストの順番どおりに国試に出るポイントを確認できるようになっています。
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