「循環器は範囲が広くて、どこから覚えればいいかわからない…」「心筋梗塞と狭心症、大動脈解離の違いがあいまい…」
この記事では、救急救命士国家試験の循環器の過去問を、第48回・第49回の問題を中心に解説します。国試形式の練習問題と、問題集830の問題もあわせて、全13問に挑戦できます。


この記事でわかること
- 循環器で国試に問われやすいテーマ
- 第48回・第49回の過去問6問と解説
- 国試形式の練習問題4問と解説
- 問題集830の問題3問(11版の新基準を含む)
- 循環器を得点源にする勉強のコツ
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循環器で国試に問われやすいテーマ
循環器は、一般問題でも状況設定問題でも出題される重要分野です。とくに次の疾患は、症候・心電図・合併症をセットで覚えておきましょう。
| テーマ | 押さえるポイント |
|---|---|
| 急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症) | 胸痛の特徴、放散痛、ST変化、合併症 |
| 急性大動脈解離 | 移動する激痛、血圧の左右差、合併症 |
| 心不全 | 左心不全と右心不全の症候の違い |
| 不整脈・心電図 | 心室細動に移行しやすい不整脈、波形の特徴 |
| 心タンポナーデ | ベックの三徴、奇脈 |
救急救命士国家試験の過去問(第48回・第49回)6問
まずは実際の国家試験の問題です。答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてください。解説は救急救命士学習塾が作成したものです。
第49回 午前A 問77
中高年の心室細動の原因として頻度の高いのはどれか。1つ選べ。
- 心筋炎
- 心臓振盪
- 先天性心疾患
- 急性冠症候群
- QT延長症候群
▼ 答えと解説を見る
答え:4
解説
中高年では、動脈硬化を背景にした急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)が、心室細動の原因として最も多くなります。
心筋炎、心臓振盪、先天性心疾患、QT延長症候群は、若年者やスポーツ中の心室細動の原因として知られています。「年齢によって原因が変わる」ことがポイントです。
第49回 午前A 問92
心筋梗塞の症候となりうるのはどれか。1つ選べ。
- 発熱
- 歯痛
- 耳鳴
- 鼻出血
- 腰痛
▼ 答えと解説を見る
答え:2
解説
心筋梗塞では、胸の痛みが別の場所に広がる「放散痛」がみられます。左肩や左腕のほか、下顎、歯、前頸部、心窩部などに現れることがあります。
「歯が痛い」という訴えでも、冷汗や胸部の不快感を伴う場合は心筋梗塞を疑う必要があります。高齢者や糖尿病の傷病者では、胸痛を訴えない無痛性心筋梗塞もあります。
第49回 午前A 問68
背部痛を訴える傷病者で大動脈疾患を疑う症候はどれか。1つ選べ。
- 前屈で痛みが改善する。
- 安静時に痛みが軽減する。
- 下肢伸展で痛みが増悪する。
- 移動性の激烈な痛みがある。
- 片側下肢の帯状の痛みがある。
▼ 答えと解説を見る
答え:4
解説
急性大動脈解離では、突然の激しい痛みで発症し、解離が進むにつれて痛みの場所が移動するのが特徴です。
1. 前屈で痛みが軽くなるのは、急性膵炎などでみられる特徴です。
2. 安静で軽くなる痛みは、筋肉や骨格の痛みを考えます。
3. 下肢を伸ばして挙げると痛みが強くなるのは、腰椎椎間板ヘルニアなどを疑う所見です。
5. 片側下肢の帯状の痛みは、神経根の症状を考えます。
第48回 午前A 問49
心不全の症候で低心拍出量により生じるのはどれか。1つ選べ。
- 喘鳴
- 水泡音
- 肝腫大
- 四肢冷感
- 頸静脈怒張
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答え:4
解説
心臓から送り出される血液が減ると、全身の組織への血流が低下し、四肢の冷感や蒼白が現れます。
1・2. 喘鳴や水泡音は、左心不全による肺うっ血の症候です。
3・5. 肝腫大や頸静脈怒張は、右心不全による体循環のうっ血の症候です。
心不全は「うっ血による症候」と「低心拍出量による症候」に分けて整理すると覚えやすくなります。
第48回 午前A 問73
急性心筋梗塞の急性期の重篤な合併症はどれか。1つ選べ。
- 心破裂
- 心房細動
- 心房中隔穿孔
- 肺血栓塞栓症
- 大動脈弁閉鎖不全
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答え:1
解説
急性心筋梗塞の重篤な合併症には、致死性不整脈(心室細動など)、心原性ショック、心破裂、心室中隔穿孔、乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全などがあります。
3. 穿孔が起こるのは「心房中隔」ではなく「心室中隔」です。
5. 弁の合併症は「大動脈弁」ではなく、乳頭筋断裂による「僧帽弁」閉鎖不全です。大動脈弁閉鎖不全は、急性大動脈解離の合併症として覚えましょう。
言葉が似ている選択肢で引っかけてくる問題です。
第48回 午前A 問85
心房細動について正しいのはどれか。1つ選べ。
- 若年者に頻発する。
- 脈拍は規則的である。
- デルタ波を特徴とする。
- 脳塞栓症の原因となる。
- 脈拍は100/分を超えない。
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答え:4
解説
心房細動では、心房の中に血栓ができやすくなり、それが脳に飛ぶと脳塞栓症を起こします。
1. 高齢者に多い不整脈です。
2. 脈拍は不規則になります(絶対性不整脈)。
3. デルタ波はWPW症候群の特徴です。
5. 頻脈になり、100/分を超えることがあります。
過去問をもっと解きたい方は、こちらの記事もどうぞ。
関連記事:【2026年版】救命士国家試験の過去問&解説|頻出問題20をわかりやすく解説!
国試形式の練習問題 4問
続いて、国家試験と同じ形式の練習問題です。後半の2問は、傷病者の状況から疾患を考える状況設定問題です。
練習問題1
ベックの三徴はどれか。1つ選べ。
- 血圧上昇、静脈圧上昇、心音増強
- 血圧上昇、静脈圧低下、心音減弱
- 血圧低下、静脈圧上昇、心音減弱
- 血圧低下、静脈圧低下、心音減弱
- 血圧低下、静脈圧低下、心音増強
▼ 答えと解説を見る
答え:3
解説
ベックの三徴は、心タンポナーデでみられる「血圧低下」「静脈圧上昇(頸静脈怒張)」「心音減弱」の3つです。
心臓のまわりに血液などがたまって心臓が広がれなくなるため、血液を送り出せず(血圧低下)、心臓に戻れない血液が静脈にたまり(静脈圧上昇)、心音が遠くなります(心音減弱)。仕組みから考えると覚えやすくなります。
練習問題2
心電図でPQ間隔が延長するのはどれか。1つ選べ。
- 心筋虚血
- 電解質異常
- 脚ブロック
- 房室ブロック
- 心室性期外収縮
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答え:4
解説
PQ間隔は、心房から心室へ興奮が伝わる時間(房室伝導時間)を表します。房室ブロックでは、この伝導が遅れたり途絶えたりするため、PQ間隔が延長します。
脚ブロックではQRS幅が広くなり、心筋虚血ではST部分やT波が変化します。「どの波・どの間隔が何を表すか」を整理しておきましょう。
練習問題3
60歳の男性。就寝中に強い背部痛が出現したので救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識JCS20。呼吸数26/分。顔面は蒼白で四肢冷感を認める。また、橈骨動脈の拍動に左右差を認めた。最も考えられる疾患はどれか。1つ選べ。
- 脳梗塞
- 急性心筋梗塞
- 肺血栓塞栓症
- くも膜下出血
- 急性大動脈解離
▼ 答えと解説を見る
答え:5
解説
「突然の強い背部痛」と「橈骨動脈の拍動の左右差」から、急性大動脈解離を考えます。解離が腕へ向かう動脈に及ぶと、左右で脈の強さや血圧に差が出ます。
顔面蒼白や四肢冷感はショックの徴候です。意識障害がある点にも注意しましょう。解離が頸動脈に及ぶと、脳卒中のような症状が出ることがあります。
練習問題4
75歳の男性。狭心症の既往がある。早朝公園を散歩中に突然胸骨裏の激しい胸痛発作に襲われ、ベンチに座り込んだ。ポケットのニトログリセリンを舌下に服用しても、全く効果が無かったので救急要請した。救急隊現着時観察所見:意識清明。脈拍120/分。血圧85/60mmHg。顔貌は蒼白で冷汗を認める。胸痛の程度は変わらず、30分以上継続しているとのこと。最も考えられる疾患はどれか。1つ選べ。
- 急性心膜炎
- 労作性狭心症
- 肺血栓塞栓症
- 急性心筋梗塞
- 急性大動脈解離
▼ 答えと解説を見る
答え:4
解説
決め手は「ニトログリセリンが効かない」「胸痛が30分以上続いている」の2つです。労作性狭心症であれば、安静やニトログリセリンで数分のうちに治まります。
血圧低下、頻脈、冷汗、顔面蒼白はショックの徴候で、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞と考えます。
問題集830から3問(11版の新基準を含む)
最後に、救急救命士学習塾の問題集830から3問を紹介します。1問ごとに、解答・解説・テキストの参照ページがついています。
問題集830 問613
急性心筋梗塞(AMI)の病院前対応における酸素投与に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。1つ選べ。
- AMIではSpO₂値にかかわらず高流量酸素を投与するのが原則である。
- SpO₂値が90%以上かつ頻呼吸・起坐呼吸・心原性ショックがなければ、酸素投与は必ずしも必要ではない。
- SpO₂値が95%未満の場合には、必ず補助換気を実施する。
- 酸素投与の適否は病院到着後に決定すればよく、搬送中に変更する必要はない。
- 心電図モニターで危険な不整脈がなければ酸素投与の要否を評価する必要はない。
▼ 答えと解説を見る
答え:2
参照ページ:11版569ページ/10版570ページ/9版599ページ
※11版からの新基準(酸素投与の基準が変更)
解説
①11版からSpO₂≥90%で呼吸状態が安定していれば酸素は不要。
③補助換気を検討する閾値は「酸素投与のみでSpO₂≥90%を維持できないとき」。
④搬送中もSpO₂と呼吸状態を連続評価し、必要に応じて投与量を調整する。
⑤酸素投与の判断基準は血中酸素化と呼吸・循環状態。不整脈の有無とは直接関係しない。
10版で勉強してきた人は、ここが変わっているので注意してください。11版の変更点はこちらでまとめています。
関連記事:救命士テキスト11版と10版の変更点まとめ|国試に出る追加・修正を一覧で解説
問題集830 問623
植込み型ペースメーカーの特徴的な心電図波形はどれか。1つ選べ。
- J波
- デルタ波
- STの上昇
- スパイク波
- テント状T波
▼ 答えと解説を見る
答え:4
参照ページ:11版579ページ/10版580ページ/9版564ページ
解説
①低体温
②WPW症候群
③狭心症
⑤高カリウム血症
誤りの選択肢が「どの病態の波形か」まで解説に書いてあるので、1問で5つの波形を覚えられます。
問題集830 問625
急性大動脈解離について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 血圧の左右差は必発する。
- 脳卒中症状を発症することがある。
- 梅毒が原因で起こることが最も多い。
- 痛みの程度は発症後からしだいに増悪する。
- スタンフォードA型は前胸部痛からはじまる。
▼ 答えと解説を見る
答え:2と5
参照ページ:11版581ページ/10版582ページ/9版760ページ
解説
①左右差は大動脈解離の徴候の一つであるが、頻度は高くない
③動脈硬化によるものが最も多い
④発生時がもっとも強い
⑤スタンフォードB型は肩甲骨の間付近からはじまる
問題集830の中身と使い方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:救急救命士の問題集は何から始める?「問題集830」の中身と使い方【11版対応】
循環器を得点源にする勉強のコツ
1. 似ている疾患は「違い」で覚える
循環器の問題は、似た疾患を見分けられるかを問うものが中心です。次のように、違いが出るポイントを並べて整理しましょう。
| 労作性狭心症 | 急性心筋梗塞 | 急性大動脈解離 | |
|---|---|---|---|
| 痛みの続く時間 | 数分 | 30分以上 | 突然の激痛(発症時が最も強い) |
| ニトログリセリン | 効く | 効かない | ― |
| 特徴的な所見 | 安静で治まる | 放散痛、冷汗、ST上昇 | 痛みの移動、脈・血圧の左右差 |
2. 誤りの選択肢を「正しい文」に直す
第48回の問73では、「心房中隔穿孔」「大動脈弁閉鎖不全」という、正しい用語と1文字違いの選択肢が出ていました。誤りの選択肢を「心室中隔穿孔」「僧帽弁閉鎖不全」と直せるようにしておくと、同じテーマの別の問題にも対応できます。
3. 心電図はイメージで覚える
心電図は文字だけで覚えるより、波形と心臓の動きを結びつけたほうが定着します。こちらの記事も活用してください。
関連記事:【救命士国試】12誘導心電図で心筋梗塞の効率学習!イメージで覚えられる!
関連記事:【救命士国家試験】中学生でもわかる!「弁膜症」と「心不全」をイメージでマスターする勉強法
まとめ:循環器は「疾患の特徴セット」で解ける
- 中高年の心室細動の原因は急性冠症候群が多い
- 心筋梗塞は放散痛(歯・顎・左肩など)に注意。合併症は心破裂・心室中隔穿孔・僧帽弁閉鎖不全
- 急性大動脈解離は「移動する激痛」と「脈・血圧の左右差」
- 心不全は「うっ血」と「低心拍出量」に分けて整理する
- 急性心筋梗塞の酸素投与は、11版で基準が変わった
国試対策の全体像は、まとめページで確認できます。
関連記事:救急救命士国家試験対策まとめ|勉強法・過去問・テキスト11版を順番に解説
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