令和3年10月1日から、救急救命士法が改正されました。
具体的には次の2点です。
①重症傷病者に対して院内処置が可能(第 2 条および第 44 条 2 項)
②病院勤務をするにあたり、院内研修受けること(第 44 条 3 項)
ちなみにですが・・・。
今回の法改正で、医療機関に勤務する救急救命士のみに出されている条文があります。
第四⼗四条 3
病院⼜は診療所に勤務する救急救命⼠は、重度傷病者が当該病院⼜は診療所に到着し当該病院⼜は診療所に⼊院するまでの間において救急救命処置を⾏おうとするときは、あらかじめ、厚⽣労働省令で定めるところにより、当該病院⼜は診療所の管理者が実施する医師その他の医療従事者との緊密な連携の促進に関する事項その他の重度傷病者が当該病院⼜は診療所に到着し当該病院⼜は診療所に⼊院するまでの間において救急救命⼠が救急救命処置を⾏うために必要な事項として厚⽣労働省令で定める事項に関する研修を受けなければならない。
この法解釈としてはさまざまな意見があると思います。
僕の見解は、「病院での業務としての処置は研修が必要ということ」です。
って疑問が発生します。
この見解については、傷病者の病院搬送後は、「搬送後実習」として扱われている消防本部がみられます。
つまり、救急隊が搬送後に行っていることは。「処置」ではなく「実習」なのです。
現に再教育ポイントが付与されている消防本部もあります。
法の解釈は本当に難しいと思います💦
さてさて、本題に戻ります。
今回の記事は前回に引き続き「救急救命士法の改正について」お伝えしようと思います。
前回の記事で「救急救命士法の改正」の総論をお伝えさせていただきました。
今回の記事は各論として「救急救命士の処置について」になります。前回の記事を読んでいただくと、救急救命士法の全体像が見てるので、理解度が高まると思います。
今回の記事は「重症傷病者に対して院内処置が可能(第 2 条および第 44 条 2 項)」の救急救命士の処置をピックアップします。
「あなた」が病院に傷病者を救急搬送して、実際にこんなことを疑問に思いませんか??
院内処置が可能になったって、聞いていたけど・・・。
って、救急救命士法改正の紙面上だけ見てもなかなか理解はできません。
こういった疑問は尽きないと思います。
って半信半疑になると思います。
疑問に思いながらの、活動は精神的負担が大きいものです。
それですので、そういった疑問に全て答えていきたいと思います。
[/voice]・医療機関に勤務する救急救命士の処置の範囲を知りたい人。
・救急救命士の特定行為の認定がどのように行われるのか知りたい人
・特定行為の指示は誰が出せるのか知りたい人。
・医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置以外の業務を知りたい人。
こんにちは!!救命士学習塾講師のHARUです。
僕も塾長と同じで救急救命士東京研修所(エルスタ)の卒業生です。
救急救命士の運用が始まってから10年以上のキャリアを持ちます。
さきほど疑問を投げかけたように、さまざまな疑問があると思います。
我々が医療機関に勤務する救急救命士に関わるのが、「病院に搬送したとき」になります。搬入したときに処置の範囲を理解しておかなければ、「任せていいのか、どうなのか」わからず、連携を取ることができません。
それなので、理解を深めておくことが重要となってきます。
それなので今回は「医療機関に勤務する救急救命士の処置の範囲」をお伝えします。
・【ポイント①】勤務する医療機関の機能(三次病院、二次病院)で救急救命処置の機会が異なります。
・【ポイント②】医療機関の体制(傷病者を処置するための、資器材の種類)によって処置できる範囲が異なります。
・【ポイント③】勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲(特定行為の認定の有無)によって処置できる範囲が異なります。
・【ポイント④】救急救命処置(特定行為)の指示は、直接医師が行います。(主に救急医が担当し、それ以外は病院ごとに異なります)
・【ポイント⑤】救急救命処置(特定行為)以外の業務は、法で定められていないため、病院ごとに異なる診療補助となります。
いよいよ救急救命士の医療機関での勤務がはじまったけど、まだ馴染みがないから、今一つピンとこないね・・・。
まだ始まったばかりで、病院側も手探り状態だと思うんだ!!
さらに、救急救命士の救急救命処置を複雑にしているのが、3ステップを踏んでいるからなんだ。
それは、
①医療機関の機能
②医療機関の体制
③勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲
によって異なるんだ。
参考までになんだけと、この3ステップを踏まえて、医療機関に勤務する救急救命士の処置範囲が決定(病院内に設置される、「救急救命士の関する委員会」において)するんだ。
じゃあ、単純に消防の救急救命士みたいに、全救急救命士が一律で処置ができるわけではないんだね。
まずは「消防に勤務する救急救命士は処置内容が全く異なる」という理解が必要であり、
できる救急救命処置の範囲は、
3ステップで決定している。
と理解してください。
今回は、「法改正後の処置の範囲」を5点解説していきます。
もくじ
【ポイント①】勤務する医療機関の機能(三次病院、二次病院)で救急救命処置の機会が異なります。
勤務する医療機関の機能(三次病院、二次病院)で、病院に勤務する救急救命士の処置の機会が異なります。
なぜなら、搬送してくる傷病者の傷病程度が異なってくるからです。
それなので、二次病院と三次病院での処置の多さの違いを改めて書いてみたいと思います。
二次病院の救急救命士の処置の範囲(特定行為)
機会が多い処置→静脈路確保、ブドウ糖溶液
機会が少ない処置→気管挿管、アドレナリン投与
基本的に重症傷病者は搬送されてきません。(地域の事情によって異なることがあります)
CPAなどの蘇生が必要とされる処置(気管挿管、アドレナリン投与、ショック輸液)は少ないと思います。
しかし、点滴を必要としている傷病者や低血糖傷病者は搬送されてきます。
それなので、静脈路確保を中心とした処置が多くなると思います。
三次病院の救急救命士の処置の範囲(特定行為)
機会が多い処置→気管挿管、アドレナリン投与
機会が少ない処置→静脈路確保、ブドウ糖溶
重症傷病者しか搬送されてきません。(地域の事情によって異なることがあります)
CPAなどの蘇生が必要とされる処置(気管挿管、アドレナリン投与、ショック輸液)が多くなります。
しかし、その反面、重症傷病者以外の傷病者はなかなか搬送されてきません。
それなので、静脈路確保の処置は少なくなると思います。
だったら、三次病院に勤務した方が救命士として成長できるね!!
三次病院って、医療関係者を育成するという目的もあるから、メチャクチャ研修医とか看護師とかが多いんだ・・・。
つまり、医療機関に勤務している救急救命士が処置できる機会そのものが少なくなる可能性があるんだよね・・・。
その中でも、存在感を出しながらがんばっていかないといけないってとこだね!!
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲は、勤務する医療機関の機能によって異なります。
二次病院に勤務の救急救命士の処置
機会が多い処置→静脈路確保、ブドウ糖溶液
機会が少ない処置→気管挿管、アドレナリン投与
三次病院に勤務の救急救命士の処置
機会が多い処置→気管挿管、アドレナリン投与
機会が少ない処置→静脈路確保、ブドウ糖溶
空飯の考え
僕的は処置の多さはそんなに意識しなくてもいい気がします。
【ポイント②】医療機関の体制(傷病者を処置するための、資器材の種類)によって処置できる範囲が異なります。
医療機関に勤務する救急救命士は医療機関の体制によって行える処置の範囲が異なってきます。
なぜなら、処置に必要な医療機器しか、医療機関に置いていないからです。
たとえば、医療機関に勤務する救急救命士がビデオ喉頭鏡の資格を持っていたとしても、その病院にビデオ喉頭鏡が配備されていなかったら、医療行為をすることはできないということになります。
単純に二次病院は軽症から中等症傷病者を収容し、三次病院は重症者を収容しています。
二次病院は重症傷病者対応を想定していないので、蘇生を中心とした機材は配備していない可能性があります。
(※あくまで地域によって違いがあります)
三次病院は重症傷病者対応を想定しているので、蘇生を中心とした機材を配備しています。
さらに先ほど例に上げた、「ビデオ喉頭鏡」は蘇生に特化した機材であり、二次病院には配備していない可能性があります。
また、もう一つ大問題があります!!
それは、救急隊が使用している乳酸リンゲル液です。
病院によっては乳酸リンゲル液がない病院もあります。
例えば、酢酸リンゲル液(ソリューゲンFなど)しか使ってない病院です。
こうなると、救命士は輸液ができません。
救命士法違反に抵触するからです。
↑このタイプは救命士は輸液してはいけない。
乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液
救命士だから、乳酸リンゲル液を使うのは普通でしょ??
って思うかもしれませんが、実は乳酸リンゲル液を使用しないと、救急救命士法違反になってしまいます💦
(全ての病院が乳酸リンゲル液を使っているとは限りません)
これも、医療機関の体制の一つになります。
医療機関に勤務する救急救命士は、勤務する医療機関の体制によって行える救急救命処置の機会が異なります。
二次病院は重症傷病者対応を想定していないので、蘇生を中心とした機材は配備していない可能性があります。
三次病院は重症傷病者対応を想定しているので、蘇生を中心とした機材を配備しています。
※また、注意が必要なことは、救急救命士が行える静脈路確保の輸液は乳酸リンゲル液のみです。(勤務する医療機関に配備してもらわないと処置が行えません)
【ポイント③】勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲(特定行為の認定の有無)によって処置できる範囲が異なります。
医療機関に勤務する救急救命士の特定行為の資格範囲で救急救命処置が決まってきます。
なぜなら、資格を単純に持っていないと処置を行なえないからです。
たとえば、特定行為も資格(ビデオ喉頭鏡、薬剤投与)になります。その資格を持っていなかったら行うことはできないということになります。
たとえば、消防に勤務する救急救命士は都道府県のCM(メディカルコントロール)の認定を受けろと思うんだけど・・・。
都道府県MCの認定は努力目標という立ち位置になっています。
つまり、勤務する医療機関ごとの認定になるのではないかと思います。
まだ、医療機関に勤務する救急救命士の運用が始まって、時間が経過していません。手探りな部分もありますが・・・。
実は、もう一つ疑問があるんだ・・・。↓の文章を見てほしいんだけど・・・。
この中で、「救急救命処置を指示する医師は」って書いてあるんだけど、救急救命処置を行なうにあたって、全て医師の指示がいるのかな??
↓の図のように救急救命処置って全部で33項目あるよねー??
中には、血圧測定もあるけど、一回一回、
「先生!!この傷病者に対して、血圧測定していいですか??」
って指示をもらうのかな??
解説するね!!
救急救命士法上では救急救命処置は医師の指示必要というようになっています。
その中でも具体的指示と包括的指示に分かれます。
※消防では包括的指示ってなじみがあり分かりやすいんだけど、今後医療機関で使用する場合は医療用語の「メディカルパス」ということになりそうです。
それなので「包括的指示=メディカルパス」になります。
上の表で、
具体的指示=特定行為
包括的指示(メディカルパス)=それ以外の救急救命処置
になります。
追伸 プロトコールは必要なのか??
プトロコールは消防に勤務する救急救命士に特化させたものです。
それは、医師が側にいないことを前提に作られているからです。(実際に救急現場には医師がいないため、電話で直接指示をもらっています)
医療機関に勤務する救急救命士の場合、側に医師がいるのでプロトコールが不要(直接医師が特定行為を見ることができるため)となります。
まだまだ、医療機関に勤務する救急救命士制度が始まったばかりですもんね💦
分からないことがあったら、質問してもらったら、なんでも答えていこうと思います!!
医療機関に勤務する救急救命士の特定行為の資格範囲で救急救命処置が決まってきます。
なぜなら、資格を単純に持っていないと処置を行なえないからです。
なお、救急救命処置で医師の具体的指示が必要なものは
具体的指示=特定行為
包括的指示(メディカルパス)=それ以外の救急救命処置
になります。
【ポイント④】救急救命処置(特定行為)の指示は、直接医師が行います。(主に救急医が担当し、それ以外は病院ごとに異なります)
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置の指示は主に救急医となります。
なぜなら、今回の救急救命士法で改正された、医療機関に勤務する救急救命士の処置ができる場所に、常に一緒にいるのが救急医だからです。
改正された救急救命士法をもう一度確認してみたいと思います。
第四⼗四条 3
病院⼜は診療所に勤務する救急救命⼠は、重度傷病者が当該病院⼜は診療所に到着し当該病院⼜は診療所に⼊院するまでの間において救急救命処置を⾏おうとするとき
それなので、救急医が救急救命処置の指示を出すことが理にかなっていることになります。
また、救急医が一緒に勤務することが多いので、指示を出しやすいということもあります。
じゃあ、救急救命処置の指示を出せるのは、救急医に限定されるのかな??
実は、限定ではないんだ。
医療機関の状況によって異なっていて、たとえば、救急搬送傷病者の診療を担当することが多い診療科医師(循環器科、麻酔科、呼吸器内科等)は指示をすることができると思うんだ。
救急医に限定してしまうと、救急医が処置室に不在の場合、指示を電話(オンライン)でもらわないと救急救命処置ができないからね・・・。
それじゃあ、消防に勤務する救急救命士と状況が変わらないよね・・・。
医療機関に勤務する救急救命士が救急救命処置を行なうための環境は揃っているというわけなんだね✨
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置の指示は主に救急医となります。
※ただし、医療機関の状況によって異なり、たとえば、救急搬送傷病者の診療を担当することが多い診療科医師(循環器科、麻酔科、呼吸器内科等)は指示をすることができます。
【ポイント⑤】救急救命処置(特定行為)以外の業務は、法で定められていないため、病院ごとに異なる診療補助となります
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置以外の業務は病院ごとに異なっています。
なぜなら、法律で明文化されてなく、その病院の事情に合わせて行うからです。
一体どんなことをするんだろう??
どんなことをしているのか、僕も勉強をしてみました。
その一例を紹介したいと思います。
病院に勤務する救急救命士の救急救命処置以外の勤務
・消防機関からの受け入れ要請に対する記録の作成
・患者の搬送業務
・医師が実施する処置の支援
・転院先の手配・調整
・ドクターカー、病院救急車の管理・運航 等々
それは、医療機関に勤務する救急救命士の主戦場は処置室での救急救命処置になります。
いざ処置を実施しないといけない時に、
ってことになったらとんでもないですもんね(笑)
それですから、常に処置室の周りには、救急救命士がいるってことになりますね!!
勤務する病院の実情に合わせて救急救命処置の内容が異なってきます。
たとえば、
・消防機関からの受け入れ要請に対する記録の作成
・患者の搬送業務
・医師が実施する処置の支援
・転院先の手配・調整
・ドクターカー、病院救急車の管理・運航 などが考えられます。
まとめ
・【ポイント①】勤務する医療機関の機能(三次病院、二次病院)で救急救命処置の機会が異なります。
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲は、勤務する医療機関の機能によって異なります。
二次病院に勤務の救急救命士の処置
機会が多い処置→静脈路確保、ブドウ糖溶液
機会が少ない処置→気管挿管、アドレナリン投与
三次病院に勤務の救急救命士の処置
機会が多い処置→液気管挿管、アドレナリン投与
機会が少ない処置→静脈路確保、ブドウ糖溶
・【ポイント②】医療機関の体制(傷病者を処置するための、資器材の種類)によって処置できる範囲が異なります。
医療機関に勤務する救急救命士は、勤務する医療機関の体制によって行える救急救命処置の範囲が異なります。
二次病院は重症傷病者対応を想定していないので、蘇生を中心とした機材は配備していないかのうせいがあります。
三次病院は重症傷病者対応を想定しているので、蘇生を中心とした機材を配備しています。
※また、注意が必要なことは、救急救命士が行える静脈路確保の輸液は乳酸リンゲル液のみです。(勤務する医療機関に配備してもらわないと処置が行えません)
・【ポイント③】勤務する救急救命士の救急救命処置の範囲(特定行為の認定の有無)によって処置できる範囲が異なります。
医療機関に勤務する救急救命士の特定行為の資格範囲で救急救命処置が決まってきます。
なぜなら、資格を単純に持っていないと処置を行なえないからです。
なお、救急救命処置で医師の具体的指示が必要なものは
具体的指示=特定行為
包括的指示(メディカルパス)=それ以外の救急救命処置
になります。
・【ポイント④】救急救命処置(特定行為)の指示は、直接医師が行います。(主に救急医が担当し、それ以外は病院ごとに異なります)
医療機関に勤務する救急救命士の救急救命処置の指示は主に救急医となります。
※ただし、医療機関の状況によって異なり、たとえば、救急搬送傷病者の診療を担当することが多い診療科医師(循環器科、麻酔科、呼吸器内科等)は指示をすることができます。
・【ポイント⑤】救急救命処置(特定行為)以外の業務は、法で定められていないため、病院ごとに異なる診療補助となります。
勤務する病院の実情に合わせて救急救命処置の内容が異なってきます。
たとえば、
・消防機関からの受け入れ要請に対する記録の作成
・患者の搬送業務
・医師が実施する処置の支援
・転院先の手配・調整
・ドクターカー、病院救急車の管理・運航
などが考えられます。
そうなんだよね。最終的には勤務する、医療機関にゆだねられている部分も大きいから、消防に勤務している救急救命士みたいに「全国一律の勤務状況」というわけにはいきません。
今回お伝えさせてもらった部分も、ほんのさわりなだけで、もっともっと奥が深いと思うんだよね・・・。
ただ、今までにない新しい救急救命士の勤務体系だから、本当に頑張ってほしいと思うよ!!
消防と病院の救急救命士のコラボレーション的な話も早く聞きたいよ!!
楽しみにしてるね!!