こんにちは、空飯です。
心電図のt波について詳しく書きました。
この記事をみれば、心電図のt波のことは、ほぼ把握できます。
この問題に答えられない救急隊員の方にはぜひ見てもらいたいです^^
救命士の方や看護師さんにも役立つ記事です。
ちなみに
救命士の資格を取りたい看護師さんにおすすめの記事↓
「T波増高の定義基準は?」
「T波異常で救急隊や看護師が注意しなければならない病気は?」
「T波に異常があるって心臓がどんな時?」
そんな疑問にお答え!
T波を調べたい人にはきっと役立つと思います。
- 平坦化、下向き(陰性化)、二相性 ⇒ 心筋虚血の状態
- T波増高 ⇒ 強く拡張しようとする ⇒ 心筋梗塞急性期・高カリウム血症
- 陰性T波の一部に冠性T波がある⇒心筋虚血であるACS・心肥大
- 巨大陰性T波 ⇒ 脳血管障害・心筋梗塞・肺塞栓症・左室肥大
もくじ
正常なT波とは?基準は?
T波があらわすもの
まず、T波とはなんなのか?
T波とは心室の拡張(再分極)。心室興奮の回復、電気的回復過程をあらわす。
通常は上向きのなだらかな波形。
T波の高さはP波の1.5倍、Rの1/2~1/8が正常。
T波の形は、はじめの2/3が上向き、あとの1/3が下向き。
つまり、この条件から外れれば異常ということです。
ちなみに…
T波が平坦化、下向き、二相性の波形では心筋虚血が疑われる。
T波が増高してれば、心筋梗塞急性期や高カリウム血症が疑われる。
詳しく説明していきます。
T波を理解するために
※2017.10.20追記
QRS波とT波の面積は一緒
出典 やってみようよ!心電図
実はQRS波とT波の面積は一緒なんです。
同じ心臓がQRS波で収縮したのち、T波で拡張します。
だから、2つがほぼ同じ面積であるのは、考えてみれば当然のことですね。
基本的にT波が高いと収縮した心臓の戻る力(拡張する力)が強い(強く戻ろうとしている)ということです。
高カリウム血症や心筋梗塞急性期ではこの力が働きます。
逆に、T波が低いということは心臓の戻る力(拡張する力)が弱いということです。
低カリウム血症などで見られます。
さらに陰性T波は心臓の虚血が主な原因です。
これらのイメージを持ってT波異常の原因を見てみると、理解が深まります。
T波⑥種類の異常波形
出典 http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shindenzu/img/shindenzu_05/1.gif
まずはT波に起こりうる異常波形についてざっくり説明します。
こちらで説明する異常波形は6種類。
- QRS波形の1/2以上に高くなるT波増高。
- T波がR波の1/10以下のものT波平坦。
- 心電図のT波は通常山型をしているが、山と谷が結合した形に変化したものを二相性(二峰性)T波。
- へこんでいる(基線に対して下向き)場合は陰性T波。
- 心筋梗塞に認められる左右対称の陰性T波のことを冠性T波。
- 陰性T波が大きくなたもの。1.0mv(10mm)以上の深い陰性T波を巨大陰性T波。
T波以外の異常波形はコチラ
心電図の読み方のコツを知りたい方に役立つ記事です↓
①T波増高とは
出典 http://med.toaeiyo.co.jp/contents/ecg/pdf/ecg2-3.pdf
心電図のT波は通常山型をしていますが、T波増高とは、高さが通常より高いことをいいます。
T波は正常であれば1.2mV以下、もしくはQRSの高さの半分以下。
つまり、QRS波形の1/2以上に高くなるとT波増高。
さらに詳しく定義基準を説明すると…
t波増高の定義基準
T波がQRS波形の1/2以上に高ければ増高と判断しましょう!
t波増高の原因
T波増高の原因はおおまかに4種類。解説していきます。
【原因1】高カリウム血症
高カリウムの心電図
出典 http://www.ecg-cafe.com/cat2/2-21/21_101
血中カリウムの基準値は血清カリウム濃度3.5〜5.0mEq/Lであるが5.5以上でT波の増高が見られる。
高カリウム血症とは血清カリウム濃度5.5mEq/L以上の状態のこと。
6.5以上でQRS幅の延長、7.0以上でP波の振幅減少となる。
原因としては腎不全や熱傷や溶血、圧挫症候群(クラッシュ症候群)など。
注意すべき症状にカリウムが上昇するとVF・VTから心停止に至る場合がある。
よって、高カリウム血症は救急隊にとって重要な病態であり、これを読み解くカギがT波の増高(テント状T波)である。
多くの誘導でT波の増高が見られる。
高い尖鋭化(先鋭)した T波をテント状T波という。
T波増高のメカニズムについて、わかりやすい説明をしていた方がいたので参考に紹介します。
⇒カリウムが高値
⇒心臓を動かす細胞のエネルギーに異常が起こる
⇒収縮した心臓がもとの形に戻りにくくなる
⇒収縮した心臓をもとに戻すために力強く心臓が拡張する(←これが増高T波!)
出典 https://nurse-singlemother.jp/?p=385
高カリウム血症の観察ポイント
出典 http://www.ecg-cafe.com/cat2/2-21/21_101
- QRS波幅の延長(幅広く変形した QRSをサインカーブ状 QRS 波と言う)
- P波の減高または消失
- STの上昇
- T波の増高(テント状T波)
実際の高カリウム血症の心電図
出典 http://www.ecg-cafe.com/cat2/2-21#jp-carousel-1032
サインカーブ状 QRS 波
出典http://takamidai-clinic.com/?p=19209
テント状T波のみの異常波形から、さらに重症化すると「QRS幅の増大」「P波消失」が伴います。
幅広く変形した QRSを「サインカーブ状 QRS 波」と言います。
テント状T波とQRS延長が結合した状態を示す波形で、心停止直前の状態で大変危険です。
【原因2】心筋梗塞の急性期
心筋梗塞発症極早期の心電図波形
出典 http://med.toaeiyo.co.jp/contents/ecg/pdf/ecg2-3.pdf
発症極早期(1時間未満)には異常Q波はみられず、尖鋭増高した T 波が出現。
急性心筋梗塞ではST-T上昇の前にT波増高が見られることがある(1時間未満)。
胸痛など伴っていれば確定的。
また高カリウム血症と違い一部の誘導でT波の増高が見られる。
【原因3】完全左脚ブロック
出典 http://www.ecg-cafe.com/cat2/2-18#jp-carousel-997
典型的にはV1誘導でrSまたはQR型、Ⅰ、V6誘導で幅広い分裂した陽性R波もしくは結節を認めるR波が出現する。
QRS幅が0.12秒以上であれば完全脚ブロック、0.10~0.12秒であれば不完全脚ブロックと呼ばれる。
出典 http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shindenzu/shindenzu_03.html
救急隊がメインで使用するⅡ、Ⅰ、Ⅲ誘導で確認できないが、幅の広いQRS波形が観察できる。
【原因4】容量負荷による左室肥大
T波増高以外にも左室高電位(QRS波の増高)、興奮時間の延長(QRS幅の延長)が認められる)
②T波の平低化(平坦化)とは
低カリウム血症による心電図t波平低化(平坦化)
出典 https://nursepress.jp/206884
平低T波とは通常はなだらかな山型をしているT波が平坦になった状態。
T波の平低化(平坦化)の原因は?
多くは心臓筋肉に負担がかかった状態や障害により起こります。
心筋梗塞、左室肥大,低カリウム血症,甲状腺機能低下症,糖尿病などさまざまな病態で見られます。
健常女性や肥満でもみられることがあります。
原因不明のものも少なくありません。
③二相性(二峰性)T波とは
t波平坦化と2相性
出典 Welcome to 佐野内科ハートクリニック
平低T波のうち、二相性(陰性と陽性凹凸)のT波のもの。
心筋の虚血によるものが多い。
原因も平低t波に準ずる。
④陰性T波(陰転化)とは
T波が逆転し、陰性波(基線に対して下向き)としてみられること。
鑑別方法としては基線より低くなっていれば陰性T波と判断してよい。
通常T波はaVrで陰性で正常。
Ⅰ、Ⅱ、V2~V6で陽性なのが正常。
この陽性のはずである誘導が逆転(陰転化)するのが異常で、陰性T波となる。
陰転化したT波(陰性T波)は心筋虚血でおもにみられる。
陰性T波の原因
陰性のt波は通常心臓の虚血(酸素不足)をあらわす。
よって原因となるのは心筋虚血であるACS(急性冠症候群である心筋梗塞や狭心症)や心肥大であることが多い。
他にもQT延長症候群、薬剤影響、低カリウム血症、脳出血などでも現れる。
⑤冠性T波(シーガルT)とは
出典 http://med.toaeiyo.co.jp/contents/ecg/pdf/ecg2-3.pdf
陰性t波も冠性t波も同じような意味に見えるが、冠性T波とは比較的幅が狭く、左右対称の陰性T波のことである。
おもに急性冠症候群に対して使われる。
心筋梗塞後半日から数日の間に出現すると言われている。
陰性T波でかつ上記の場合冠性T波として扱う。
これが陰性T波との違いである。
ちなみに、冠性T波のことをシーガルTとも言います。
シーガル(sea gull)=カモメのことです。
カモメの飛んでいる格好に似ているのでこの名前がついた。
冠性T波も陰性T波の一部です。
したがって、救急隊が現場で冠性T波様の心電図を観察できたら
「T波の陰性化が確認できます。」と伝えてもOKです。
(むしろ、その方が良いかも)
上の図のように心筋梗塞になってST-T波上昇していたT波は2~3日後にT波の逆転が始まる。
さらに、1~4週以降では陰転化し冠性T波となる。
冠性T波の原因は心筋梗塞にある。
⑥巨大陰性T波とは
出典 https://img.kango-roo.com/upload/images/scio/active/206-236/ch4-38.png
陰性T波との違いは定義基準にある。
左右対称の10mm以上の深い陰性T波が巨大陰性T波。
aVRでは陰性T波が正常だが10mm以上になると異常で巨大陰性T波と判断する。
V1,V2誘導では若年者や女性では健常人でも陰性T波になることがあるが10mm以上なら巨大陰性T波。
原因としてはクモ膜下出血をはじめ、脳血管障害のほかに、心筋梗塞や肺塞栓症、左室肥大がある。
T波増高では心筋梗塞や高カリウム血症に注意が必要だったが、逆の巨大陰性T波では脳血管障害の否定を主軸に活動しなくてはならない。
もちろん、心筋梗塞や肺塞栓症にも注意が必要。
まとめ
- 平坦化、下向き(陰性化)、二相性 ⇒ 心筋虚血の状態
- T波増高 ⇒ 強く拡張しようとする ⇒ 心筋梗塞急性期・高カリウム血症
- 陰性T波の一部に冠性T波がある⇒心筋虚血であるACS・心肥大
- 巨大陰性T波 ⇒ 脳血管障害・心筋梗塞・肺塞栓症・左室肥大
その理由は冒頭でも説明したとおり「高カリウム血症と心筋梗塞」を見つけるサインだからです。
どちらも救急医療では重要な病態で、それゆえに助けられる可能性がある見逃し厳禁な病態です。
T波の増高、陰性化を確認できたときは胸の痛みや苦しさ、「心臓の病気があるって言われたかとはありませんか?」などと聴取や観察に生かしましょう。
また、病院連絡の際ここで得た知識を無理に出す必要はありません。
(無理に「2相性のT波です。」などと伝えなくても良い)
要はT波が増高しているか陰性化しているかを伝えればいいのです。
知識をひけらかすのではなく、心筋梗塞と高カリウム血症の判断材料として医療機関に伝えましょう。
▼T波について学んだ人は、「心電図の読み方のコツ」もオススメです▼
▼まだ救命士ではない人はこちらの記事で国家試験について学んでおきましょう!▼
参考させていただいたサイトと書籍
ヒント:QRS波形の〇〇以上に高くなるとT波増高と判断できる。(病院連絡で伝えてOK)