こんにちは!!救命士学習塾講師のHARUです。
僕も塾長と同じで救急救命士東京研修所(エルスタ)の卒業生です。
救急救命士の運用が始まってから10年以上のキャリアを持ちます。
まずは、↓のニュースをご覧ください。
※ニュースの概要は「現場対応中の救急救命士が、静脈路確保に自信がなかったため、現場に居合わせた看護師に処置依頼をして処分される」というものです。
心肺停止で救命活動中…偶然居合わせた看護師に“医療行為”指示 消防職員が懲戒処分 患者は意識取り戻す(東海テレビ) – Yahoo!ニュース
救命士は使命感の塊です。その使命感は大きくなり「なにがなんでも助ける」って領域になります。
それなので、救急隊員は「静脈路確保は成功して、救命できたのにどうして処分されるの??」って理解できないと思います。
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!!
今回の処分は、手段(特定行為)と目的(救命)が混同してしまったために起きたものです。
救急車に乗っている「あなた」の目的(救命)を果たすためなら何をしてもいいという考えを改めることができます。
この記事では特定行為の本質5点をお伝えします。
・手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になっている
・救急救命士法の違反
・地方公務員法違反(信用失墜行為の禁止、上司の命令に従う義務違反)
・処分をしないと消防という組織が成り立たない
・救命士に特定行為のスキルがない
あのねあのね!!今回のケースはせっかく救命できたのに、どうして処分されちゃったの??私、全く理解できなくて・・・。
たとえば、今回とはまた、別のケースなんだけど、救急現場に医師がいたとして・・・。
救命活動をしているのか??私は医師だ!!
処置なら任せなさい!!
救命士。介助してくれ!!
なーんてことも、十分考えられるよね💦
医師だって名乗っている以上、無視するわけにもいかないし・・・。
僕は医師だと名乗っても、「医師だって証明するものはない」から処置はさせません。「責任の所在が分からなくなる」からね。
医師免許持って見せてくれたら、処置をしてもらうけど、そんな人はいないでしょww
この話題は昔、僕の所属しているMC(メディカルコントロール)でも話題に上がってことがあるんだ。
結論、「顔を知っているMC所属の医師が現場にきたら、処置させても可」というところに落ちつきました。
それはそうだよね・・・。「私、医師です」詐欺にあってしまったら、適当に処置をされて「あれ、処置した医師(詐欺医師)がいない・・・。」ってことになって、「だれがこの処置の責任を取るの」ってことになるよね・・・。
特定行為を行う上で、いろいろなパターンが存在しますが、「特定行為の本質」を知ってもらおうと思います。
特定行為の本質とは「救急救命士が責任を全うすること」です。
救急救命士法やMCのことを絡めながら考えていこうと思います。
たとえば、救命士は「救命」という使命感が常にあります。その「救命」にあまりにも縛られて、今回のように「手段」を誤ります。
手段を間違えると、今回のように処分されます。
この記事の内容を理解すると、特定行為の本質が分かり、処分回避できます。正しい特定行為の考え方をインプットしたい方は是非参考にしてみてください。
それでは、解説していきます。
もくじ
手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になっている
救急救命士は救命するためなら可能な手段を探します。
理由は一つで、「なにがなんでも救命したい」と考えるからです。
しかし、この時に、失敗が起こります。手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になるからです。
実際に救急隊の最大の目的は、「救命すること」ですが、それは「正しい手段を行ってからの話」になります。
全ての事案に医師対応ができないから、医師の代行として救急救命士が現場処置を行ないます。処置を行なうためには、明確な取り決めが存在します。
明確な取り決めとは、救急救命士法、消防法、所属するMC(メディカルコントロールの規約)等です。
その範囲内で、救急救命士は手段(特定行為)を行い、目的(救命)を果たさないといけません。
それなので、救急救命士が行う処置は手段(特定行為)と目的(救命)の関係が重要になってきます。
※今回のように、看護師に静脈路確保を依頼することは上で示した「明確な取り決め」に明記されていないので、いくら目的(救命)を果たしても、手段(特定行為)が違うので問題となるのです。
とはいえ、世論は救命できたことに擁護的な声が上がっていることも事実です。
心肺停止で救命活動中…偶然居合わせた看護師に“医療行為”指示 消防職員が懲戒処分 患者は意識取り戻す(東海テレビ)のコメント一覧 – Yahoo!ニュース
たしかに、救命できたことは素晴らしいことですが、結果オーライがいいわけではありません。
我々救急救命士は公務員になるわけですから、ルールに乗っ取った「救命」が求められます。
正しい手段で救命できてこそ賞賛されます。
周りの評価は気になりますが、我々のルールで救命していきましょう。
では、先ほどの「明確な取り決め」を深掘りしていこうと思います。
救急救命士は救命するためなら可能な手段を探します。
理由は一つで、「なにがなんでも救命したい」と考えるからです。
しかし、この時に、失敗が起こります。手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になるからです。
救急救命士法違反
現場に居合わせた、看護師に「静脈路確保を依頼」することは、救急救命士法違反になります。
理由は一つで、特定行為を行うためには救急救命士法第44条に「特定行為を実施するには医師の具体的な指示を受ける」と書いているからです。
要は、他の医療従事者に依頼することは書いてなく、指示を受けたことは自分でおこなうことが書かれています。
では具体的に見ていきたいと思います。
救急救命士法第44条を詳しく見てみると、
第四十四条 救急救命士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める救急救命処置を行ってはならない。
と書いてあります。
救急救命士が特定行為の実施を前提として法が決まっています。
静脈路確保が取りにくい状況だっら、特定行為の指示要請医師に相談すべきですね。
さらに、保健師助産師看護師法をみると、
第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。
と書いてあります。
それなので、救急救命士、看護師ともに侵襲のかかる処置は「医師の指示が必要」ということになります。
それなので、医師じゃなかったら、侵襲のかかる処置(特定行為)はできません。
※医師自体が侵襲のある処置をすることができるので、医師に依頼することは問題ありません。
しかし、今回のように救急現場に医師が居合わせて処置ができるかというと、「医師と証明するものがないと処置は厳しい」と考えます。それなので、先ほど説明したように僕の所属しているMCでは「顔が分かるMC医師」と決められています。
もし、「あなた」の消防本部で、この部分があいまいだったら、所属しているMCに確認することを強くおススメします。
事故が起こってからでは、遅いですからね!!
というわげでおさらいをすると、静脈路確保を現場来場の医療従事者に依頼することは、救急救命士違反になります。
現場に居合わせた、看護師に「静脈路確保を依頼」することは、救急救命士法違反になります。
理由は一つで、救急救命士法第44条に「特定行為を実施するには医師の具体的な指示を受ける」と書いてあり、「他の医療従事者に依頼することができる」とは書いていないからです。
地方公務員法違反(職務上の上司の命令に従う義務違反、信用失墜行為の禁止)
上司に虚偽の報告することは地方公務員法違反になります。
理由は一つで、職務上の上司の命令に従う義務違反、さらに信用失墜行為の禁止になるからです。
って思いますよね。
実際に今回の静脈路確保を看護師に依頼した件で考えていきます。
今回の処分は、職務上の上司の命令に従う義務違反になります。
それは、上司は日ごろから、正確な報告を部下に義務づけているからです。
そして、虚偽の報告がバレた場合、ウソをついていたわけですから、公務員全体の信用を落とします。
つまり、これが、信用失墜行為の禁止に触れます。
※自分の部署だけなら、まるく収めることも可能だったかもしれませんが、他部署が絡む(傷病者、特定行為指示医師、搬送先病院等)とそうはいきません。
それなので、上司に虚偽の報告をするということは地方公務員法違反になります。
上司に虚偽の報告することは地方公務員法違反になります。
理由は一つで、職務上の上司の命令に従う義務違反、信用失墜行為の禁止になるからです。
処分しないと消防という組織が成り立たない
救命できたからと言って、処分されます。
理由は一つで、公務員の処分に例外はないからです。
※いいことをしたからと言っても、処分を免れるものではありません。
実際の処分対象は、地方公務員法違反に該当したことになります。
今回のケースでも、「虚偽の報告をした」ということで、処分の対象となっています。
仮にですが、救命できたから「処分を免れた」としたら例外ができます。
例外ができたら、処分される人と、処分されない人が出てきます。そうなってくると、極端に消防本部の幹部と仲がいい人は処分されないってことが発生します。
そんなことになると、組織が成り立たなくなります。
つまり、処分されたことは適正だったと思います。
※救命できたから処分されないという考えではなく、その過程が誤っていたのです。となると、現場に居合わせた看護師が静脈路確保を失敗したとしたら・・・、どうなっていたのでしょうね??
救命できたからと言って、処分はされます。
理由は一つで公務員の処分に例外はないからです。
救急救命士に特定行為のスキルがない
現場に居合わせた看護師に静脈路確保を依頼したことが問題になります。
理由は一つで、救急救命士のスキルが不足していたからです。
実際、我々が救急現場で静脈路確保を行う場合は、ショックやCPA傷病者に対して行います。
血管は虚脱して、はっきりと見ません。
その状況で静脈路確保を行わなといけません。
実は訓練を行う時に、張りのある血管で行っていると、実際行う時に血管が見えなくて自信がなくなります。
訓練を行う際には、見えない血管を探す訓練や見えない血管に向かって針を刺す訓練がとても有効になります。
手技に自信がなくなのも理解できます。実践を補うためにも訓練あるのみです。
現場に居合わせた看護師に静脈路確保を依頼したことが問題になります。
理由は一つで、救急救命士のスキルが不足していたからです。
まとめ
手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になっている
救急救命士は救命するためなら可能な手段を探します。
理由は一つで、「なにがなんでも救命したい」と考えるからです。
しかし、この時に、失敗が起こります。手段(特定行為)と目的(救命)が一緒になるからです。
救急救命士法の違反
現場に居合わせた、看護師に「静脈路確保を依頼」することは、救急救命士法違反になります。
理由は一つで、救急救命士法第44条に「特定行為を実施するには医師の具体的な指示を受ける」と書いてあり、「他の医療従事者に依頼することができる」とは書いていないからです。
地方公務員法違反(信用失墜行為の禁止、上司の命令に従う義務違反)
上司に虚偽の報告することは地方公務員法違反になります。
理由は一つで、職務上の上司の命令に従う義務違反、信用失墜行為の禁止になるからです。
処分をしないと消防という組織が成り立たない
救命できたからと言って、処分はされます。
理由は一つで公務員の処分に例外はないからです。
救命士に特定行為のスキルがない
現場に居合わせた看護師に静脈路確保を依頼したことが問題になります。
理由は一つで、救急救命士のスキルが不足していたからです。
以上となります。
今回のケースは「救命」できたからこそいろいろ複雑に考えさせられたものでした。
しかし、静脈路確保を依頼した看護師が、「失敗」した場合、その責任の所在はどこにあったのでしょうか?
静脈路確保を行ったことで搬送遅延が発生して「搬送先の医師に遅延理由を求められた場合」責任の所在はどこにあったのでしょうか??
もちろん、消防に所属の救急救命士に全てかかってきます。
そこまでのリスク管理はできていなかったと思います。
全ては「救命できた」という結果オーライの陰に隠れた「ヒヤリハット」と言わざるを得ません。
それは、自ら静脈路確保を成功させるスキルを身につけておくことです。
自信がないということは誰しもあると思いますが、それを補うための訓練だと思います。自信がない状態であれば、処置そのものができないと思います。
一気にはスキルアップはできないから、コツコツ積み上げていくだけだね!!
これからも、「救急救命士の方々」や「救急救命士になりたい救急隊員の方々」には市民のために、努力していってほしいと思います。
いつもありがとう!!
今回の記事も「あなた」にとって有益なものになったのでしょうか??
今後もどんどん、「あなたのお役に立てる記事」を発信していきます。最後まで読んでいただきありがとうございました。
救命できたのだからOKじゃないの??
なぜ処分対象となったの??
自分が同じ状況になったらどう行動したらいいの??