こんにちは、救命士学習塾塾長の空飯(→プロフィール)です。
10年以上救急隊で数多くの社会死を判断してきました。
そんな経験から、
この記事では救急隊が社会死と判断する基準6項目をまとめました。
救急隊の死亡判断、観察項目、見逃し事故防止について書いています。
というのも、ツイッターで以下のようなリクエストがありました。
というわけで、社会死についてまとめていきます。
「シュババ‼︎AEDにうるさいマン」さん、リクエストありがとうございました!
・死体化現象と救急隊員の判断のポイント追加。
こちら総務省消防庁から全国の消防本部に発行されている通達です。
参考になるのでリンク貼っておきます↓
救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準
根拠となる資料:消防実務質疑応答集
上記をもとに現場を経験した空飯が解説していきます。
消防庁からの通達↓
1 「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」 (消防実務質疑応答集から抜粋)
(1) 意識レベルが300であること。
(2) 呼吸が全く感ぜられないこと。
(3) 総頸動脈で脈拍が全く触知できないこと。
(4) 瞳孔の散大が認められ、対光反射が全くないこと。 (5) 体温が感ぜられず、冷感が認められること。 (6) 死後硬直又は、死斑が認められること。
※ 以上の全てが該当した場合2 「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」の ほか、次の事項についても十分に留意すること。
(1) 傷病者の観察にあたっては、「明らかに死亡している」という先入観を持た ないこと。
(2) 聴診器、心電計等の観察用資器材を活用し、心静止を確認するなど、的確な観 察を実施すること。
(3) 判断に迷う場合は、指示医師に連絡し、指示・指導・助言を受けること。
引用:https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/300604_kyu109.pdf
もくじ
社会死の判断基準6項目(7項目)
救急隊が明らかに死亡していると判断するときとは?
- 外傷等での断頭、体幹部の離断、全身の炭化などが確認される状態。
- 医師が死亡診断した時。
- 腐敗、自己融解が認められる。
- 死後硬直や死斑が認められる。
上記が明らかに死亡している状態。
1、2、3は明らかに死亡しているといえます。
よって、不搬送で良いと思います。
しかし、4の「死後硬直や死斑が認められる。」は気をつけましょう。
念のために次の6項目を確認することが大切です。
救急隊が社会死と判断する6項目
- JCS300
- 呼吸なし
- 総頸動脈触れず
- 瞳孔散大、対光反射消失
- 冷感認める
- 死後硬直又は、死斑が認められる
以上の7項目6項目全てに該当した場合は明らかに死亡しているとみなすことができる。
消防実務質疑応答集428ページ参考
死体化現象一覧表
※環境温度が高いほど早く出現。下肢から上向性に生じることがある。
早期死体現象 :死斑、死後硬直、体温低下、角膜混濁
晩期死体現象 :自家融解、腐敗、白骨化
特殊死体現象 :ミイラ化、死蝋化
救急隊が判断するときのポイントは硬直と死斑
個人的に判断に迷うのが死んでから6時間までの時期です。
理由は8時間以降は全身硬直してるなら明らかに死んでいると判断しやすいから。
全身硬直前が社会死の判断に迷うところです。
ということで、死んでから6時間までのポイントとなる観察ポイント
社会死を判断する際に救急隊が注意すべきこと
【不搬送を決断】絶対に行うべき4つのこと
- 家族の同意を得る。説明をしっかりおこなう。
- 家族から同意の署名をもらう。
- 警察機関へ連絡、現場保存、引き継ぎ。
- 観察結果の記録と不搬送の理由(
7項目6項目は必須)を記入。
※万が一、民事起訴となれば活動記録票が重要な書類となる。
不搬送については↑も参考に。
【見逃し事故防止】空飯が実際に行っている3つの活動
- 死後硬直が出ていてもモニターは装着し、心電図の記録を取っておく。
- 寒冷地でのCPAは原則搬送する。観察もいつも以上に時間を掛けて(30〜45秒)行う。
- 死斑は指圧で消退する(18時間まで)。必ず押して確認する。
これらは空飯が現場活動していったうえで「大事だな」と思った点です。
かならず実施するようにしています。
平均年齢20代前半の空飯救急チームは慎重です笑
心電図は「心静止」の記録として有効です。
印刷した波形は記録として残しましょう。
寒冷地でのCPAはよっぽどでない限り搬送することが吉です。(原則搬送の原理)
死斑は指圧で消失するという特徴があります。(18時間までは指圧で消退)
「これ、死斑?」と思ったら押して確認!消退したなら死斑です。
死斑とは
写真は18時間以上たった死斑です。
出典 https://medu4.com/111G35
- 血液循環は停止し血管内血液は重力によって下方にたまります。
- つまり、仰臥位で死亡したら背面に死斑が出現。
- 心停止後約30分で出現。
- 2時間ではっきりとなる。
- 6~10時間で著明。
- 18時間までは指圧で消退。
- それ以降は消退もしなくなる。
- 突然死の場合は死斑の出現は早く、程度も強い。
- 失血死の場合は出現は遅く程度も弱い。
救命士テキスト9版上巻254ページ参照
救急隊の社会死まとめ
まとめ ~1番注意が必要なのは寒冷地のCPA~
他の社会死判断は最悪間違っても蘇生不可能なことがほとんどです。
(もちろん一概には言えません)
ベテランの救急隊が「これはあかん」と判断したのならなおさら。
万が一、7項目6項目を満たしていなくても死亡と判断するくらいなので蘇生は厳しいでしょう。
しかし、蘇生チャンスのあるCPAがあります。
それが寒冷地のCPA。
いわゆる偶発性低体温症です。
低体温では心肺機能がかなりゆっくりした動きになるのも相まって、死んでいるように見えます。
しかし、実は仮死状態ってことがあるのです。
例えCPAでも低体温による脳保護作用が働いるので蘇生率が一般のCPAより高いです。
脳は体温が1℃ 低下すると酸素消費量は6~7%低下します。
つまり、神経学的予後に期待できます。
したがって、寒冷地でのCPAは安易に社会死判断しない方が良いです。
慎重に慎重観察し、少しでも疑念が残れば必ず搬送するべきです。
- 重度の低体温
- 低体温に至る原因が窒息や低酸素性脳症ではない
- 若年者
- 熟練したチームによる対応
- 積極的な復温方法
- 血清カリウム値が高くない
- 動脈血二酸化炭素分圧が高くない
(萩原周一ら 偶発性低体温症:疫学と治療 ICUとCCU Vol.38 (7) 2014 453-457)
低体温のCPAについてはこちらも参考になるかと思います。
救急救命士ではない救急隊員も社会死に対しては熟知しておきましょう!
全てを救急救命士に頼るきるのではなく、チームとして「社会死」を確認することが間違わないために重要です。
参考書籍
▼まだ救命士じゃない人はこちらの記事を読んで国家試験対策を進めましょう!▼
ありがとうございます、いつも勉強させてもらってます。
リクエストですが、社会死の記事ってないですよね?救急隊の死亡判断、観察項目、見逃し事故防止など記事にして頂きたいです。余裕あらばお願い致します!
— シュババ‼︎AEDにうるさいマン (@EmtMahimahi) 2018年6月4日