こんにちは、救命士学習塾塾長の空飯(→プロフィール)です。
119訓練通報や実際に救急車を手配するときのリアルなやり取りをお伝えします。
日本一詳しい119番のかけ方解説です!
- 119通報は聞かれたことに答えれば難しくない。
- パニックになるのが一番NG。
- 固定電話119番通報は電話した場所から一番近い消防本部につながる。
- 携帯電話119番通報は基地局を中継するので、稀に管轄外の消防本部につながり、出動に時間がかかる場合がある。
- 日本の消防は優秀。場所を間違えることは稀。
- 通報訓練はこの記事の内容を電話の前に貼っておくと良い。
- 「119通報してる最中に実は出動してる」
- 「携帯電話より固定電話の方が出動が早くなる!?」
- 「119なのに保留が流れるときがある!?」
- 「いたずら電話はまるわかり。必ず逆探知機能で電話がかかってくる」
上記のことをあなたは知っていましたか?
これらは現役消防士ならではの知識です。
ここでは119番通報について表側から裏側で起こっていること(消防署で起こっていること)まで詳しく説明させていただきます!
119番の正しい掛け方。
消防士目線から見た「こんな風に通報してもらえたらありがたい」って思える通報をご紹介。
自衛消防訓練や避難訓練などで通報訓練をする場合もあると思うでこちらの記事を参考にしてください。
また、救命講習などでもしかしたら119のアドバイスをもらえるかもしれませんが、ここまで詳しく教えてはもらえません。
しかも、今回の内容は実際の職員だと言いにくいことも含まれてます。
赤裸々に消防の裏側も大公開!
消防が119を受けたとき、消防の裏側はどのようになっているのか具体的に説明します。
また、通信員になれば体験する「通信員あるある」や一般の人がよく勘違いしていることを解説。
もくじ
【基本知識】119番はどこにつながる?
119番通報は各地域の消防本部の通信指令につながります。
実際に電話したところから一番近い消防本部につながるのです。
携帯電話の場合は基地局(アンテナ)を経由しますので、使われた基地局(アンテナ)に一番近い消防本部につながります。
110番は各県の警察本部1つに繋がるのに対し、119番は県内に複数存在する消防本部の直近のところにつながります。
より地域性を理解した消防士が電話対応してくれます。
例(通報者「地元で有名な店の隣で人が倒れてる」 119通信員「ああ、〇〇町▲▲のお店ですね。わかりました」)
119番通報が対応してるのは原則火災や救急、生命、人体、財産に対する緊急の対応する必要がある時です。
「熱が上がって今から病院に行きたいんだけど、夜中でも見てもらえる病院はないの?」といった問い合わせは各消防署の代表番号にかけるようにしましょう!(救急の相談をしたいときは#7119を利用)
「同じ消防に繋がるんだから、119でもいいでしょ?」
って考える人もいるかもしれませんが、119番はあくまで緊急を要する時に使います。
問い合わせのような通報が多くなると、本当に緊急性のある電話対応が遅くなったり、支障がでる可能性があります。
大きい消防署なら通信員も多く配置されているかもしれませんが、私の所属するような田舎の小さな消防署では対応人数が2人の場合が多いです。
勿論、複数の通報時には増員するのですが問い合わせのような通報が多いと対応が遅れる可能性があります。
(例えば火災の時は問い合わせが急増するので通信室は大混乱)
隣の家でゴミを燃やしているので注意してくれないか?
鼻血が止まらないけどどうしたらいいか?
消火器を廃棄したいのだけど、どうすればいいの?
救急車のサイレンがうるさい。
避難訓練を計画してるのだけどアドバイスが欲しい。
などなど
【火災編】携帯電話からの119番の聞かれること
携帯電話で119を押す。
消防署「119消防署です。火事ですか?救急ですか?」
※まずは上記を必ず聞かれます。
あなた「火事です」
消防署「あなたは安全な場所にいますか?」
あなた「はい、外にいます。」
※火災時の家の中からの電話で逃げ遅れないために聞かれることがあります。もし、危険な屋内から電話しているのなら外に逃げて、身の安全を確保してから携帯電話から119通報しましょう。
消防署「場所を教えて下さい。自宅でしたら住所をお願いします。」
あなた「自宅ではないです。たまたま通りかかったところ、黒い煙が窓から出ているお家があって…」
消防署「わかりました。あなたのいる場所はおそらく〇〇町の〇〇付近だと思うのですが間違いありませんか?」
あなた「その通りです。〇〇町の〇〇にいます。」
この時点で消防署では「予告指令」といったものが流れます。
予告指令「ウー!ウー!(出動内容や各消防本部で音声は違う)出動指令〇〇町〇〇火災出動。〇〇化学1、〇〇ポンプ1、〇〇ポンプ2、〇〇ポンプ3以上」など
ここで対応消防士は防火衣に着替えたり、ポンプ車にエンジンをかけて出動準備をします。場所が本格的にわかり次第、迅速に出動できるようにするための工夫です。
消防署「では、付近に目立つ建物はないですか?その付近に赤色の橋が見えたりしませんか?もしくは近くに自動販売機があればそこに住所が書かれているので教えてください。」
※携帯からも位置情報で大体の場所を消防は把握しています。(PC画面にでている)その地帯によって感度が違うので市内のどこかまでしかわからないときや何丁目の何のお店の前にいるとわかるくらい精密に地図に出る時もある。今回は後者。
あなた「はい、赤い橋が見えます。」
消防署「では、その付近に〇〇商店があると思いますがあなたからどの位置に見えますか?」
あなた「〇〇商店の看板が見えます。目の前です。火事の家は商店から4件軒隣の家です。」
※この時点で消防署では「本指令」といったものが流れます。
本指令「ウー!ウー!出動指令〇〇町〇〇字〇〇1丁目-1建物火災。〇〇化学1、〇〇ポンプ1、〇〇ポンプ2、〇〇ポンプ3以上」など(指令書という地図や詳細が書かれた紙も流れてきます)
※このように具体的に言ってもらえると助かります。一番困るのは「そんなこといいからはやくきてぇー!!」と焦燥感に駆られ、錯乱することです。
場所の特定は一番大切で、そこを間違えると致命的になります。
ですので、通信員は場所の特定を裏付けが取れるまで聞きます。
(こんな質問より早く来いよ)って思われる方もいるかもしれませんが、通信のプロである彼らの質問に不必要なことはありません。素直に受け答えすることがもっとも早く緊急車両を現場に投入することにつながります。
たまにニュースとかで「出動先を間違えた」などと見かけますが、そのようになることを通信員がもっとも恐れています。
しかし、よく考えてみるとすごくないですか?たとえば、東京消防庁だけでも一日に平均すると2,923件、約29秒に1件の割合で119通報を受けます。
全国でみるとさらに多くの件数を受けて出動するのですが、出動先を間違えるニュースはたまにしか見かけませんよね?
それって、逆に言えばそれだけ間違いを最小限に抑えているともいえます。
人間である以上、ミスは必ず出現します。(0なのが理想ですが…)このことから、日本の消防体制がいかに優秀か伺えますね。
消防署「わかりました。もう消防車は出動しているので安心してください。燃えているものは建物ですね?人の住んでいる住家ですか?」
あなた「普通のお家から煙が見えるので住んでいると思います。あぁ!窓の奥から赤い炎が見えます。」
消防署「わかりました。けが人や逃げ遅れた人がいるかわかりますか?」
あなた「怪我をしている人は見かけません。逃げ遅れは通りかかっただけなのでわかりません。」
消防署「わかりました。最後にあなたのお名前と電話番号を教えてください。(電話番号は090-0000-0000だなー)」
※実は電話番号は画面に表示され、把握しているが確認のために聞く。
あなた「名前は〇〇。電話番号は090-0000-0000です。」
消防署「〇〇さんで090-0000-0000ですね。わかりました。消防車が近づいてきたら誘導をお願いします」
携帯からの119番はどこにどうやってつながる?
上記にも記載している通り携帯からの119は場所の特定に時間がかかります。
それは、携帯の場所は感度の問題から大体な位置でしかわからないからです。
中には正確な場所が最初からPCに表示されることもありますが稀です。
大体は先ほどの例のように詳しく場所を聞かれることになります。
さらに仕組みを説明すると、携帯電話からの119はまず近くの基地局(電波塔)に飛びます。
その後、基地局の管轄内の消防本部に入電します。
【豆知識】119番通報なのに保留されるときってどんなとき?
自分の場所と違うお隣の消防本部に119入電されることがあります。
管轄の境界近くで携帯から119をすると、運悪く隣町の基地局に電波が届くことがあるためです。
こうなると時間のロスで、まず隣町消防本部が119対応します。
大体の場所、かけてきた電話番号、相手の名前がわかれば対象の消防本部へ転送します。
この時に保留音が流れ通報者は待たなければなりません。
(この時間が緊急を要するときにはものすごく長く感じます)
転送→対象消防本部へ状況説明→「ではつなげます」→ようやく通報者との会話スタート
しかもまた最初から説明しなければなりません…
まぁ、大体の場所が把握していると思います。
それなら、裏側では予告指令は出て出動準備はされているはずです。
【救急編】固定電話からの119番の聞かれること
固定電話で119を押す。
消防署「119消防署です。火事ですか?救急ですか?」
※まずは上記を必ず聞かれます。
あなた「救急です」
消防署「わかりました。救急車が向かう場所を教えてください。」
※このときに指令室のPC画面には地図と住所が出ています。しかし、万が一間違った場所が出てしまった場合や隣の家から119をした場合、実家に救急車を呼んでほしいなど。必ずしも119をかけた場所と救急車が向かう場所は一致しないためにあえて場所を聞きます。
あなた「住所ですか?住所は…あー、ここは友達の家なのでわかりません。〇〇町なんですが…」
※この時点で消防署では「予告指令」といったものが流れます。
予告指令「ピー、ピー!(出動内容や各消防本部で音声は違う)〇〇町救急入電中。」など
ここで対応消防士は感染防護服に着替えたり、場所の確認、経路の確認、救急車にエンジンをかけて出動準備をします。
消防署「大丈夫です。井上さん宅の〇〇町字〇〇2-3でないですか?」
あなた「あ!たぶんそうです!友達は井上さんですし。」
消防署「隣は〇〇商店でないですか?」
あなた「その通りです。」
※この時点で消防署では「本指令」といったものが流れます。
本指令「ピー、ピー!救急出動〇〇町〇〇。救急1以上」など(指令書という地図や詳細が書かれた紙も流れてきます)
消防署「救急車はもう出ましたので安心してください。誰がどうされましたか?」
※携帯からも位置情報で大体の場所を消防は把握しています。(PC画面にでている)その地帯によって感度が違うので市内のどこかまでしかわからないときや何丁目の何のお店の前にいるとわかるくらい精密に地図に出る時もある。今回は後者。
あなた「友人の井上さんが突然頭痛を訴えて倒れました。」
消防署「井上さんは男性ですか?女性ですか?何歳になりますか?」
あなた「50歳の女性です。」
消防署「意識はありますか?」
あなた「はい、あります。とても痛がっています。」
消防署「現在かかっている病気やかかったことのある病気はありますか?」
あなた「わかりません。」
消防署「わかりました。誰かお願いできる人がいれば救急車を誘導お願いします。最後にあなたのお名前と電話番号を教えてください。(電話番号は090-0000-0000だなー)」
※実は電話番号は画面に表示され、把握しているが確認のために聞く。
あなた「名前は〇〇。電話番号は090-0000-0000です。」
消防署「〇〇さんで090-0000-0000ですね。わかりました。」
119番する前に
意識がなく呼吸がない場合→心肺蘇生
意識がなく呼吸がある場合→窒息しないように横向きに寝る(回復体位)
意識も呼吸もある場合→必要ならば応急手当て(熱中症なら冷却、出血なら圧迫出血など)
応急手当てが必要なければ以下のものを準備しておく
- お薬手帳
- 保険証(名前、生年月日のわかるもの)
- 今までかかったことのある病気や現在治療中の病気を把握しておくと良い
119番通報訓練の聞かれること
あなた「119番を発信する。 」
消防署「はい,119番消防です。火事ですか?救急ですか?」
あなた「訓練、訓練。火事です。」
消防署「場所はどこですか?」
あなた「○○市○○町○○丁目○番○号 ○○○○です。」
消防署「その建物は何階建てですか?燃えているところは何階ですか?」
あなた「○階建ての○階が燃えています。」
消防署「逃げ遅れた人はいませんか?」
あなた「○名が逃げ遅れています。」
消防署「何が燃えているかわかりますか?」
あなた「○○が燃えています。」
消防署「近くに目標になる建物はありますか?」
あなた「○○○○があります。(○○の西側です。)」
消防署「あなたのお名前と連絡先を教えて下さい。」
あなた「○○です。電話は○○○-○○○○です。」
消防署「わかりました。すぐ行きます。」
まとめ
- 119通報は聞かれたことに答えれば難しくない。
- パニックになるのが一番NG。
- 固定電話119番通報は電話した場所から一番近い消防本部につながる。
- 携帯電話119番通報は基地局を中継するので、稀に管轄外の消防本部につながり、出動に時間がかかる場合がある。
- 日本の消防は優秀。場所を間違えることは稀。
- 通報訓練はこの記事の内容を電話の前に貼っておくと良い。
119番通報はめっちゃ緊張しますが2点だけ間違わなければOKです。
1つ目、通報に躊躇する。悩んだら通報してください。特に減るものはありません。必要なことは119番の通信員が丁寧に指示してくれます。
2つ目は「パニックにならない」です。緊急を要することなので気持ちはわかります。しかしあなたが冷静に質問に答えることが一番の近道です。「そんなこといいから早く来い!」はもっとも無駄なやり取りです。
【追伸】法律の関係上サイレンを止めて緊急出動することはできません。気持ちはわかりますが・・・
どうしても早くサイレンを止めて欲しい場合は家の前で救急車を誘導しましょう。見つけ次第サイレンを止めてくれるはずです。
▼こんなときは119番通報!▼
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更新 2019年12月28日