小脳性運動失調(四肢の運動失調)の有無を見る神経学的検査である。
患者の示指を自分の指先に当てさせて、次にその指で検者の指先と、患者の指先を交互に触れるように命じる。
もくじ
鼻指試験の説明
出典 救命士テキスト
指鼻指試験とは
指鼻指試験とは小脳運動の観察方法。
- 傷病者は人差し指で傷病者自身の鼻先と救急隊の指先を交代交代に触れさせる。
- 救急隊は少しずつ指の位置を動かして患者がそれに合わせて指を動かせるか観察する。
観察のポイント
救急隊は自分の指を患者が手を伸ばしてようやく届くような距離におく
なぜなら、救急隊の指が近すぎると正確に小脳運動を評価できない。
3つの異常
測定障害
- 測定障害は患者の指が検者の指にちゃんと付くかどうかで評価
- 検者の指を通り越してしまう場合は「測定障害あり」
- 測定障害には測定過大と測定過小とがある
- 定過大とは検者の指を通り越してしまうこと
- 測定過小とは検者の指の前で止まってしまうことを言う
- 小脳失調で見られる測定障害は測定過大
小脳失調では運動をストップさせるタイミングが遅れたり、筋肉のトーヌス低下があるために測定過大となる。
運動の分解
- 人間の行う多くの動作は複数の筋肉の運動が組み合わされてスムーズに動くことによって実現できている
- 複数の筋肉の連携がうまくできなくなることを運動の分解という
- 小脳症状のある患者の場合、指を自分の鼻の頭に持っていく時に肩関節と肘関節を同時に屈曲させることができない
- 先に肩関節だけが屈曲して上腕が挙上してから遅れて肘関節が屈曲して指を自分の鼻に当てる
- つまり、肩関節の屈曲運動と肘関節の屈曲運動の協調が解体している
時間測定異常
- 患者に閉眼させて、両上肢を伸展させて広く外転させる
- 検者の合図で両上肢で同時に指鼻試験(患者の指を患者の鼻につける)を行わせる
- 小脳障害のある側の手において指が動き出すのも、鼻に到着するのも遅れる
- このような症状を時間測定異常という
小脳の検査として行われるが、当然麻痺があったり錐体外路症状があったりしても時間測定異常は出現するので注意。
3つの異常のまとめ
病院のカルテには「指鼻指試験:陰性、不良」や「指鼻指試験やや稚拙」などと表現するのは本来望ましくない。
できれば測定障害、運動障害、時間測定異常について記載するべき。
ただし、救急隊はこの限りではない。
検者の指先は1回ごとに位置を移動させることが大切。
示指の動き方、振戦の出現、鼻先に正確に達するかどうかで「測定障害、共同運動不能、振戦の有無」が判定できる。
ちなみに、小脳の障害では、同側に異常が出現する。
鼻指試験を動画で確認(鼻指試験不良の例)
このように試験を行います。
異常があれば動画のように自分の指を指示通りにふっつけることができなくなります。
動画のような場合は四肢運動失調と判断し、小脳の異常にフォーカスします。
この動画は…
測定障害あり、測定過大ですね。
活動記録票には「鼻指試験不良」で記載しましょう。
具体的な方法
「めまい」の傷病者には鼻指試験や回内回外試験を行い、小脳出血の判断に活かしましょう!
搬送中でもできる観察方法なので使い勝手がいいですね。
ストレッチャー上でもでるのがポイントです。
嘔気やあまりに傷病者が辛そうでしたら無理にやらせてはいけません。
傷病者のためにならない観察は「救急隊の自己満足」です。
そのような時は医師に「回内回外試験を行おうと思ったのですが、患者さんが辛そうでしたので安静搬送を優先しました。」でOKです!
また、やり方を言葉だけでなく、ジェスチャーすることが大切です。
相手の手をとって「こうですよ」と説明するとスムーズです。
鼻指試験はこちらのサイトでも詳しく説明されています。
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