こんにちは、空飯です。
今回は救急体位の武器の一つ「体位管理」について解説します。
- 仰臥位(ぎょうがい)
- 側臥位(そくがい)
- 起坐位(きざい)
- 半坐位(はんざい)(ファウラー位ともいう)
- 回復体位(かいふくたいい)
- ショック体位(足側高位あしがわこうい)
- トレンデレンブルグ体位
- 頭部高位(頭側高位)
- 逆トレンデレンブルグ体位
- 腹臥位
もくじ
体位管理の目的
体位管理の目的は基本的に以下の7点です。
- 血液分布を変え血液循環動態を変化させ、呼吸・循環機能の改善を図る。
- 気道の開通性を確保する。
- 嘔吐に備え、誤嚥を予防する。
- 頭蓋内圧を低下させ、脳ヘルニアへの進展を防止する。
- 毒物の小腸内への移動を阻止する。
- 出血を減少させる。
- 苦痛を軽減させる。
いずれも傷病者の状態を悪化させないため、苦痛の軽減のために実施します。
体位管理の種類と適応
仰臥位
- 背中を床につけた仰向けの基本的な体位
- ストレッチャー上での仰臥位ばかりでなく、バックボード上の全脊柱固定もこの体位である。
- 傷病者の安定がよい。
- CPR、AEDなどの処置が行いやすい。
- 舌根沈下などの対する配慮の必要性が生じることもある。
側臥位
- 左右どちらかを下にして横向きにする体位。
- 側臥位は不安定なので、毛布などの補助があれば良い。
- 側臥位では次の効果が得られる。
- 気道開通性維持
- 誤嚥予防
- 毒物の小腸内への移動防止 左側臥位
- 肋骨骨折の際の痛みの軽減 損傷部位を下にする(必ず傷病者に楽になったか聴取)
- 妊婦に対する呼吸・循環確保 左側臥位
起坐位
- 上半身を拳上し、背中をもたれさせる体位。
- 肺がうっ血しているような心不全や肺水腫などで、呼吸困難を強く訴える傷病者に適応。
- 極度の肥満者は仰臥位で呼吸困難をを起こすことが多いので、上体を起こした方が良い。
- 喘息傷病者の大発作時には状態をかがめ、あぐらをかくような体位をとる場合が多い。
- この体位は起坐位であるばかりでなく、呼気筋を使って積極的な呼気努力をしているのであり、傷病者はこの姿勢のほうが楽なのでそのまま搬送する。
- 毛布を抱かせて前かがみにし、口すぼめ呼吸を指導するとなおよい。
重篤発作であり.バッグ・バルブ・マスクの使用にもかかわらず全身症状、SpO2値の改善がみられない場合には,胸郭外部圧迫(スクイジング)による呼吸介助拳を考慮する。
半坐位(ファーラー位)
- 急性腹症や出血性ショックのない腹部外傷などで、腹痛を強く訴える傷病者に対してとる体位。
- 傷病者の上半身を30~45度拳上した半坐位で、頭部が50~60センチ高くなるようにする。
- 膝を屈曲させ、その下に枕やバスタオルを入れてやると、さらに苦痛軽減に効果があることがある。
回復体位
- 反応はないが正常な呼吸と有効な循環が確認された意識障害傷病者や、嘔吐の危険のある傷病者に対してとらせる体位。
- 回復体位は気道開通を維持して気道閉塞と誤嚥のリスクを減らすために考案されたものである。
- 側臥位とほぼ同じであるが、傷病者自信で安定性が得られる体位である。
基本的に現場で行う体位で、救急車内では側臥位で応用する。
なぜなら足を広げるためにストレッチャー上ではできない。
一般の方などで、やり方が不安に思ったなら「横に寝かせる」と覚えればよい。
効果はほぼ同じである。
横にしてさらに安定させるのが回復体位である。
ショック体位(足側高位)
- 仰臥位で両下肢を拳上する基本的な体位。
- 両下肢を拳上することで中心静脈への血流還流を増やして、心臓の前負荷を増加させるために行う。
- 用手で持ち上げたり、両下肢の下に毛布などを入れて拳上するが、わずかの高さでは効果はなく、十分に拳上する必要がある。
- 骨盤骨折時は下肢拳上により動揺するため危険。
出血性ショック アナフィラキシーショック 貧血など
肺水腫(左心不全) 頭部外傷など
胸痛、ショックバイタルあり、血圧低下(収縮期血圧<90mmHg)ありの傷病者であっても、身体所見によって適切な体位管理は異なります。
左心不全を伴う(湿性ラ音あり)→起座位
右心不全を伴う(頸静脈怒張あり)→ショック体位
不整脈源性(Lown分類III以上)→仰臥位 pic.twitter.com/9F23gMBoSz— OJ★ (@jun0426) 2018年9月1日
トレンデレンブルグ体位
- ショック体位からさらに頭部を低くした体位。
- 救急現場ではストレッチャーやバックボードを傾けて頭部、体幹及び下肢を一体として、頭部を低くした体位をさすことが多い。
- ストレッチャーなど全体を頭部低位にすると安定が保ちづらい。
- 脳圧亢進を起こす。
- 重力により横隔膜が頭側へ圧迫されることで呼吸困難をきたす場合がある。
- 十分な下肢拳上によるショック体位で代用できる。
救急隊は知識として知ってますがデメリットが多いため現場では使用しません。
頭部高位(頭側高位)
- 仰臥位から上半身を約15~30度拳上した体位。
- 頭部外傷や脳卒中が疑われ、循環状態のよい傷病者に対し、頭蓋内圧亢進予防の目的でとられる。
心臓への静脈還流が少なくなるので、出血性ショックの傷病者では禁忌。
枕をあてがうなどして頭部だけを拳上することは行ってはならない。
頸部の屈曲により静脈還流が阻害され、脳圧は逆に更新するからである。
逆トレンデレンブルグ体位
- トレンデレンブルグ体位とは反対で、ストレッチャーやバックボードを傾けて、頭部、体幹、下肢を一体としたまま頭部を高くする体位。
- 頭部高位と同様で出血性ショック時は禁忌である。
腹臥位
- 腹ばいで顔を横に向けた体位。
- 嘔吐しているもしくは嘔吐する可能性のある傷病者や背面に外傷がある傷病者に適応。
体位管理のまとめ
傷病者は無意識のうちに、その病態に応じたもっとも適切な体位をとっている場合があります。(というか、多いです)
このとき、安易な判断によって体位を変換すると、病態が一気に悪化することがあるので注意が必要です。
また、体位変換により一時的に循環動態乱れが生じるため、予備力の低下した傷病者では血圧や意識レベルの低下をきたすこともあります。
体位変換の場合、傷病者を慎重に観察しながらゆっくりと行いましょう。
体位変換前後のバイタルサインの変化にも注意すること。