こんにちは、救命士学習塾講師のHARUです。
僕も塾長と同じで救急救命士東京研修所(エルスタ)の卒業生です。
救急救命士の運用が始まってから10年以上のキャリアを持ちます。
今回は”救急救命士の災害時の特定行為”についてです。
令和6年能登半島地震での厚生労働省の通達を受けて再度記事をリライトしました。
令和6年(2024年)現在の段階でも災害派遣時などで通信途絶している場合、指示がない状況でも特定行為可能ということです。
救命士のあなたは緊急消防援助隊で他県に派遣された。
その時に、通信手段が途絶えていたら、どうでしょうか?
指示要請が絶対と思われていた特定行為、実施しても良いのでしょうか?してはいけないのでしょうか?
結論は実施可能です。
根拠をお伝えします。
- 大規模災害時で通信手段が途絶えた場合でも特定行為が実施できる。
- 通信手段が途絶えた中で、特定行為を実施した場合、事後検証を受ける必要性がある。
- 活動記録4つの内容は書いておく
- 所属するメディカルコントロールに事前確認しておく。
・災害の時に、具体的指示がなくても特定行為ができるか知りたい救命士。
・どういった方法で特定行為を実施したらいいか知りたい救命士
・報告書を作成するためにどのような情報を把握しておくべきか知りたい救命士。
学生や一般の方にはわからない用語があると思います。
救命士に向けて書いているので救命士なら当たり前にわかる『MC・特定行為・事後検証』など、業界用語で書いております。
緊急消防援助隊に派遣されて、通信障害で病院と連絡が取れなくなったりしないのかな??
特定行為って医師の指示がいるんだよね??
連絡が取れなくなったりしたら特定行為ができないんじゃないのかなって思って・・・。
過去の災害では、救急隊がもっている携帯電話が電波状況の不通で使えなかったりするケースも発生しているみたいなんだ。
そういうことがあったから、通信手段が途絶えた場合でも特定行為が実施できるように総務省消防庁から文章が出ているんだ。
下の資料を見て。
通信事情等の問題から医師の具体的指示が得られない場合についても、心肺機能停止状態の被災者等に対し、医師の具体的指示を必要とする救急救命処置を行うことは、刑法(明治 40 年法律第45 号)第 35 条に規定する正当業務行為として違法性が阻却され得るとの考えを示す事務連絡が発出されている。
じゃあ、大規模な災害だったら、ドクターみたいな感じになれるんだね!!
だけど、通信手段が途絶えた状況下で特定行為をするのだったら、さまざまな「決まり」があるんだよね。
その「決まり」を把握しておかないと、単純に特定行為を実施しましたってわけにはいかないんだよ!
この記事は、「救急救命士の災害時の特定行為」についてまとめました。
解説していくね!!
もくじ
大規模災害時で通信手段が途絶えた場合でも特定行為が実施可能
大規模な災害現場で通信手段が途絶えた場合でも特定行為が実施できます。
消防庁からの通達と厚生省が認める通達を出しているのが根拠です。
通信手段が途絶えているので、医師に指示をもらうことにこだわっていたら、救命できない理由から上記が許されております。
って思いますよね。
根拠を書いて行きます。
大切なポイントは2つ。
①自分の管轄のMCに事前確認しておく
②状況を活動記録に残す
解説して行きます。
①自分の管轄のMCに事前確認しておく
- 特定行為は県外派遣時、どこの病院から指示をもらえばいいのか?
- どのような流れで指示を受けるのか?
- もし不測な事態になった場合はどうするのか?
など、事前に確認しておくのが重要です。
特定行為の指示要請は所属(普段の活動地域)のMC(病院)からもらう
応援部隊が用いる救急活動プロトコルについて
熊本地震においても、東日本大震災後の検討結果と同様、「派遣元地域の救
急活動プロトコル」が選択されており、応援部隊が用いる救急活動プロトコル
は派遣元地域のものが適当と考えられる。特定行為指示医師の優先順位について
初動対応時には、傷病者の救命のため、判断に迷うことなく素早い処置が求
められる。そのためにも、救急活動プロトコルと同様に、特定行為の実施に係
る指示要請等は派遣元メディカルコントロール協議会の医師に仰ぐことが望
ましい。(受援側での指示体制等が指定された後は、それに従う。)
受援側で調整された派遣元と異なる地域の医師から指示を受ける場合でも、
具体的な指示を受ければ、救急活動プロトコルの差異による問題は生じないと
考えられる。
この文章を説明させもらうと、
①特定行為の指示要請は派遣元のメディカルコントロールから指示をもらうこと。
②活動上のプロトコールは派遣元のメディカルコントロールが定めているものに従うことと。
となっています。
僕が所属しているメディカルコントロールでも、所属するメディカルコントロールに電話をして特定行為の指示をもらうように指示が出ています。
それなので、出動する前や、日ごろから、どこに指示をもらったらいいのか確認しておくべきです。
【コラム】お互い無知の医師と救命士の例
たとえば、笑い話として、特定行為の指示をもらう側、出す側が無知だったとしたら・・・。
(緊急消防援助隊で出動し、派遣元に特定行為の指示要請をもらおうとした場合)
特定行為の指示要請??
なんで私が受けないといけないの??
ってことにもなりかねません。
確認しておくことに損はありません!!
なお、確認するのは、所属するメディカルコントロールです。
災害時で通信手段が途絶えた場合、指示を得なくても特定行為を実施することが法的には可能となっています。
また、特定行為を行う上で、注意が必要なことは、
①所属するメディカルコントロールから、指示をもらうこと
②所属するメディカルコントロールのプロトコールに沿っておこなうこと
が重要になります。
②状況を活動記録に残す(4つのポイント)
- 通信途絶の状況
- 通信手段の確保しようとした具体的な内容
- 代替手段がなかったこと。「ない」と判断した理由・根拠
- 傷病者に緊急性があった理由・根拠
消防庁からの通達。詳細と根拠はこちら▼
事後検証
ア 救急救命士法第 46 条第1項に基づき、救急救命処置録へ救急救命処置を
受けた者の状況、救急救命処置の内容等に関する詳細な記録を残すととも
に、以下の事項についても記録しておくこと。
・通信途絶の状況
・通信手段の確保に関して講じた措置内容
・代替手段がなかったこと及びないと判断した根拠や理由
・傷病者の切迫性
指示なしの特定行為後は事後検証を受ける
通信手段が途絶えた中、指示なしで特定行為を行った場合、事後検証を受ける必要性があります。
なぜなら、その行為に正当性があったかどうか検証する必要があるからです。
メディカルコントロールの医師が、事後検証用の書類に目を通し、特定行為をするべき傷病者であったのか。また、その手技や時間経過を検証してくれるんだ。
今回のケースでは、指示なしで特定行為を行うので、その検証が必要だよね。
上の項でもお伝えした、「通信手段が全てダメで、電波状況がいい場所に行くにしても、時間がかかるといった場合、初めて、指示なしでの特定行為が行えるもの」なので、メディカルコントロールの医師からすれば、「通信手段がだめだった理由を挙げておきなさい」ってことになるんだと思います。
それなので、一番怖いのが、「携帯電話が圏外であったから、指示なしで特定行為を実施しました」ということです。
そうした場合、「他の手段はなかったのか」というところに引っかかってしまうので注意が必要です。
それなので、常に頭に入れておかないといけないことは4つあるんだ。
①通信途絶の状況
②通信手段の確保に関して講じた措置内容
③代替手段がなかったこと及びないと判断した根拠や理由
④傷病者の切迫性
通信手段が途絶えてしまい、指示なしで特定行為を行う場合、次の4つの理由が必要です。
①通信途絶の状況
②通信手段の確保に関して講じた措置内容
③代替手段がなかったこと及びないと判断した根拠や理由
④傷病者の切迫性
災害時電話できない時の救急救命士が行う救命処置(特定行為)について
【根拠】大規模災害時等の通信途絶における救急救命処置の実施について
こちらは総務省消防庁から出ている文章「大規模災害時等の通信途絶における救急救命処置の実施について」になります。
報告書の内容
通信途絶時における特定行為の実施については、大規模自然災害以外にも、局地的な災害における停電時や、山間部、トンネルなどの環境的な要因によって、医師の具体的な指示が得られない場合も考えられる。そのような場合に備え、通信手段の強靱化・多様化を図るなどの必要な対策を行うべきである。なお、東日本大震災や熊本地震の際には、通信事情等の問題から医師の具体的指示が得られない場合についても、心肺機能停止状態の被災者等に対し、医師の具体的指示を必要とする救急救命処置を行うことは、刑法(明治 40 年法律第45 号)第 35 条に規定する正当業務行為として違法性が阻却され得るとの考えを示す事務連絡が発出されている。ただし、そのような通信途絶時に傷病者の切迫性から、救急救命士が医師の具体的な指示なしに救急救命処置をやむを得ず実施する状況になった場合には、通信途絶の状況、代替手段がなかったこと、切迫性等について詳細に記録を残し、環境的要因も考慮し、メディカルコントロール体制の中で事後検証を受けることが不可欠である。
令和6年能登半島地震でも厚生労働省が上記同様の認識であると通達を出しております。
つまり、令和6年現在の段階でも災害派遣時などで通信途絶している場合、指示がない状況でも特定行為可能ということです。
じゃあ、例えば、大規模災害に緊急消防援助隊で出動し、メディカルコントロールが違うところで活動した場合、特定行為を行うためにはどこに電話して指示をもらったらいいのかな??
その根拠となる文章が下になります。
大規模災害以外の通信手段が途切れる時も特定行為可能?
山間部の活動やトンネル内の活動で通信手段が途絶えた状態の場合、、特定行為の指示をもらわなくても特定行為をすることができます。
なぜなら、通信手段が途絶えているので、医師に指示をもらうことにこだわっていたら、救命できないからです。
例えば、こんなケースが該当になります。
・・・ここは山奥の集落になります。
そのなかで、救急事案が発生し、救急隊が出動しました。
出動する途中で、無線が途絶え、携帯電話のアンテナを確認すると、圏外の表示があります。
現場到着したら、傷病者はCPA。
すぐにでも特定行為を行いたいところですが・・・。
通信手段がないということは、特定行為ができませんよね(焦)通信状況が回復するところまで移動しましょうか??
この家の電話は借りれるか??
つまり、われわれ救命士の特定行為は「通信手段」が命となります。
仮にその通信手段が途絶えた場合に、 次の行動が起こせるように考えておかないといけません。
総務省消防庁が出している、文章では通信手段が途絶えている場合、特定行為の指示をもらわなくても特定行為を行えることにはなっていますが、確認は重要なことになります。
他の通信手段は次の項目で説明していくつもりなんだ💦
特定行為を行うにあたり、通信手段が途絶えている場合、医師へ指示要請行えません。
その場合、指示がなくても特定行為を行える可能性があります。
(ただし、所属するメディカルコントロールに確認する必要性があります)
事前に災害時優先電話の指定を受ける・通信手段の複数用意
災害時で通信手段が途絶えてしまっても、複数の通信手段を確保しておかないといけません。
特定行為の大原則は「医師の指示」が必要だからです。
2 留意事項
(1)通信手段の強靱化・多様化についての対策
報告書に記載されているとおり、通信手段の強靱化・多様化を図ること。このためには、例えば、病院連絡に使用する通信端末にあっては、事前に災害時優先電話の指定を受けておくことと、有線回線・無線回線・衛星回線等を活用することが考えられること。
この資料は先ほどから出している、総務省消防庁の文章「大規模災害時等の通信途絶における救急救命処置の実施について」になります。
つまりは、「通信手段を全て試したけど、途絶えていたので、やむを得ず特定行為を実施しました」という形が重要になってきます。
「他の手段も試してみてください」ってことが重要になるんだね!!
【ストーリー上、停電ということで固定電話は使えませんでしたが(笑)】
つまり、有事の際、固定電話は手段の一つとして考えていてもいいと思います。
その中、通信手段が全てダメで、電波状況がいい場所に行くにしても、時間がかかるといった場合、初めて、指示なしでの特定行為が行えるものだと解釈しています。
そうしないと、災害時に救急活動なんかはできません💦
さすがHARU隊長!!
災害時の現場活動で、通信手段が途絶えた場合、いくつかの通信手段を試してみてください。
試した中でダメだった場合、初めて指示なしで特定行為が行えます。
所属するメディカルコントロール(MC)に事前確認する
指示なしで特定行為を行う場合、事前に所属するメディカルコントロールに確認してください。
なぜならば、所属する(普段の活動地域)メディカルコントロールのプロトコールで救急隊は活動しているからです。
たとえば、いくら国から文章が出たとしても、所属するメディカルコントロールのプロトコールで活動しているからです。
それなので、地域で若干プロトコールが違うと思います。その地域性に合わせてプロトコールが作られているからです。
国から出た文章をそのまま解釈するのではなく、「自分たちのメディカルコントロールではどうなのだろうか」と疑問を持つようにして下さい!!
国から出た文章をそのまま解釈するのではなく、所属するメディカルコントロールのプロトコールで活動をするため、常に確認が必要です。
まとめ
① 大規模災害時で通信手段が途絶えた場合でも特定行為が実施できます。
また、特定行為を行う上で、注意が必要なことは、
⑴所属するメディカルコントロールから、指示をもらうこと
⑵所属するメディカルコントロールのプロトコールに沿っておこなうこと
が重要になります。
②実は大規模災害だけではない。通信手段が途切れることは、山間部、トンネル等の災害もあります。
特定行為を行うにあたり、通信手段が途絶えている場合、医師へ指示要請行えません。
その場合、指示がなくても特定行為を行える可能性があります。(ただし、所属するメディカルコントロールに確認する必要性があります)
③ 災害時に特定行為を実施するにあたり、複数の通信手段を確保しておくことが重要です。
災害時の現場活動で、通信手段が途絶えた場合、いくつかの通信手段を試してみてください。
試した中でダメだった場合、初めて指示なしで特定行為が行えます。
④ 通信手段が途絶えた中で、特定行為を実施した場合、事後検証を受ける必要性があります。
通信手段が途絶えてしまい、指示なしで特定行為を行う場合、次の3つの理由が必要です。
⑴通信途絶の状況
⑵通信手段の確保に関して講じた措置内容
⑶代替手段がなかったこと及びないと判断した根拠や理由
⑤ 確認事項がもう一つ!!実施するにあたっては、所属するメディカルコントロールに確認してください。
国から出た文章をそのまま解釈するのではなく、所属するメディカルコントロールのプロトコールで活動をするため、常に確認が必要です。
その中で、指示なしでも特定行為ができる場合があるってことを知って、びっくりしちゃったよ!!
確かにそうだよね・・・。ただ、救命しようと思った場合に、指示がないと特定行為ができなかったら、救命できない場合がでてきるよね。
僕は少しでも「命を助けたい」から柔軟な政策をしてくれてほんとに感謝するよ!!
今後発生する、大規模な地震にはきっと有益だろうからね。
でも、救命士が活躍=災害が起こっているってことになるからちょっと複雑だけどね・・・。
でも、HARUみたいな救命士がいるから、安心して暮らせるね!!
いつもありがとうね!!
これからも、大変だけど、がんばってね!!
上記5つが今回のポイントです!