こんにちは‼11年救急隊、そのうち4年救急救命士(隊長)をやっていた空飯(→プロフィール)です。
今回はこんな依頼や質問がLINEから届きました。
穿刺をする際に血管を探すコツなどがあったら教えていただきたいです。
いつもありがとうございます。
確かに、書籍などに書いてあるのはイラストで、分かりにくい部分がありますね。
また、静脈路確保をするための血管探しは、慣れるまでとても大変だと思います。
でも、大丈夫です。
この記事を読めば、静脈路確保を行う上でとても大切な血管探しのコツが分かります。
↓早速結論です。
- しっかりとうっ血させる。
- 弾力のある血管を選ぶ。
- 走行がまっすぐな血管を選ぶ。
- Y字になっている血管を探す。
- 血管の触り方を意識する。
- 上肢だけにとらわれない。
- 実際の画像付きで血管の名称を学びたい方
- 静脈路確保が苦手な方
- 現役の救急救命士の方
- これから救急救命士として活躍する方
もくじ
救急救命士が静脈路確保できる血管
改訂第10版 救急救命士標準テキストには下記の通り書かれています。
救急救命士による静脈路確保において選択される静脈は、手背静脈、橈側皮静脈、尺側皮静脈、肘正中皮静脈、大伏在静脈、足背静脈などの末梢血管に限定されている。
と書かれています。
この内容のポイントは赤字のところです。
「などの末梢血管に限定されている。」と書いてあるということは、他の血管でもでもいいということです。
ただし、末梢血管に限られます。
手足の静脈なら穿刺できる
上記のことから、末梢血管なら穿刺できることが分かりました。
穿刺部位に関しては、地域のプロトコールによって様々です。
- 太い静脈を選定する。
- 四肢ならどこでもよい。
- 原則として上肢の手背 前腕の静脈とする。
少し調べただけでも、地域のプロトコールによって違いがあることが分かります。
しっかりと自分の地域プロトコールに沿った、穿刺部位を選択するようにしましょう。
各血管の写真
手背静脈
橈側皮静脈
尺側皮静脈
肘正中皮静脈
大伏在静脈
足背静脈
血管をうっ血させる3つのコツ
静脈路確保を行うには、血管をうっ血させることが必要です。
しっかりとうっ血させることで得られるメリットは2つあります。
- 血管が見えやすくなり成功率が上がります。
- 血管に針が刺さった時、血管を貫きやすくなります。
2つ目は風船をイメージすると分かりやすいよ。
パンパンに膨らんだ風船に針を刺すとすぐ割れるけど、膨らんでない風船に針を刺そうとしてもなかなか穴をあけられないよね。
特に救急隊は、CPAの方に静脈路確保をする機会が多くあるため、血管を怒張させることはとても重要となります。
それでは、経験を交えながら解説していきます。
駆血帯の巻き方
まず、血管をうっ血させるためには駆血帯をまかなければなりません。
ここの手技が甘いと、うっ血が見られず静脈路確保を中止しなければなりません。
駆血帯を巻く位置
穿刺部位の5cm~10cm中枢側を駆血するようにしましょう。
たまに、手背に穿刺するのに、上腕に駆血帯を巻いている方を見ることがあります。
うっ血まで時間がかかり、しっかりと怒張させることが出来ません。
正しい位置で駆血帯を巻きましょう。
また、動脈が触れる部分も駆血する部分には適していません。
動脈を圧迫しないように、筋肉のある部分に駆血帯を巻きましょう。
駆血帯の巻く強さ
たまに、めちゃくちゃな強さで巻く人がいます。
強く巻きすぎると、動脈まで駆血することとなります。
その結果、血液流入がなくなり、逆に血管が虚脱することになります。
適切な圧迫の強さは、40mmHgくらいと言われていますが実際に測れませんよね。
なので、以下の点を意識して巻いてみてください。
- 巻いた皮膚が、軽く食い込むくらい。
- 末梢が白くならない程度。
- 体の大きい人は強め、小さい人は弱め。
腕を心臓より低い位置にする
腕を心臓より低くすることで、血液をうっ滞させることができます。
その結果、普段よりもうっ血が確認しやすくなります。
現場で静脈路確保をトライする時は難しいですが、ストレッチャー上ならできます。
うっ血が見られない時には、腕の位置を確認しましょう。
自動心マッサージ器を使用する
全国的に、救急隊員の負担軽減のため、自動心マッサージ器を導入しているとこが多くなってきました。
そして、負担軽減だけではなく、用手でCPRしている時より血管がうっ血することが見て感じられます。
これは、エビデンス(根拠)は見つかりませんが、救命士ならだれもが経験していることだと思います。
CPAの現場では、出来る限り自動心マッサージ器を装着することで、血管を探すのが容易になります。
血管の触り方を意識しよう
良い血管を探すためには、血管の触り方も大切です。
指の腹で触るのではなく、指先で触ることを意識してください。
人間の手は先に行けば行くほど敏感になります。
そうすることで、より血管の弾力や感触をとらえられます。
血管の弾力とは、柔らかくぷにぷにとした感触です。
目をつぶって、自分の血管に触れてみましょう。
それでは、どのように血管を触り探すのか、画像を見ながら学んでいきましょう。
血管の弾力を感じながら走行血管を触る
指の先で穿刺できそうな部分を上下させ、穿刺部を決定
【静脈路確保の成功率を上げる】3つの血管選定
静脈路確保の成功率を高める一つに、血管選びがあります。
やみくもに選ぶのではなく、成功率を上げる血管を見ていきましょう。
見えていなくても、弾力のある血管を優先
- 見えているが細くて脆そう・・・・
- 見えていないが弾力のある血管・・・・
現場で、どちらの血管を選ぶかは、救急救命士の判断です。
静脈路確保に慣れていないと、見えている血管にトライしたくなります。
その結果、血管を貫いてしまい失敗することが結構ありましたね。( ノД`)シクシク…
成功率を上げる秘訣は、血管は見えなくても、太く弾力がある血管に穿刺することです。
走行が真っ直ぐになっている血管
出来る限り、血管がまっすぐなところに穿刺しましょう。
蛇行していると、血管を突き破る可能性があります。
また、留置できたとしても、内筒が折れ曲がり滴下できないこともあるので注意してください。
逆Y字になっている血管
これは、見つけたらラッキーです。
普通、穿刺をする時には、血管が逃げないように皮膚を引っ張ります。
しかし、この逆Y字になっている血管は逃げにくいため、皮膚を引っ張らなくても穿刺が可能です。
このような血管を見つけたら、成功率が上がるため、積極的に狙いましょう。
簡単に見つからなくても諦めないで
CPAの現場では、血管が虚脱しうっ血がないことも少なくありません。
そこで諦めるのではなく、様々なとこを駆血してうっ血を確認してみてください。
穿刺できるところが見つかるはずです。
手背は必ず見る
意外に見逃しがちなのが手背の血管です。
救急救命士のシミュレーション訓練では、橈側皮静脈、尺側皮静脈、肘正中皮静脈に確保することが多いです。
このため、意外と手背の血管を見逃してしまうことがあります。
そして、手背の血管は、皮下脂肪が付きにくく血管が見やすいのが特徴です。
穿刺するには少しコツはいりますが、意外に成功率は高いですよ。
病院では患者さんの痛みが強く敬遠されるので、練習する機会はあまりありませんが、穿刺方法はしっかりと学んでおきましょう。
右上肢がなければ、左上肢を見よう
救急車内で静脈路確保を行う場合、右上肢だけを見て中止の判断をする方がいます。
しかし、救急車はストレッチャーを中央に移動することが出来るので、積極的に左上肢を見るべきです。
注意点は下記のとおりです。
- 車内では、いつも右上肢ばかりでトライしているので穿刺に違和感がある。
- 静脈路確保で使う資機材の置き場所に困る。
しっかりと訓練で左上肢に静脈路確保を行う訓練をしておきましょう。
どこに資機材を置いて、どんな体勢での穿刺になるのか、事前に確認しておくとスムーズです。
上肢がなければ下肢を見る
病院実習では、下肢に静脈路確保を見る機会は少ないです。
下肢にルート確保するデメリットが上肢より多いためです。
- 静脈炎
- 血栓症
- 感染
これらのリスクが高くなるので、避けるべきとされています。
しかし、CPAの場合は違います。
CPAの場合はこれらのリスクより、早期の静脈路確保が優先されます。
下肢の静脈も見逃すことがないように、しっかりとうっ血させてみましょう。
穿刺部位の第一選択は前腕部
やはり第一選択は、血管がよく見えるため前腕部です。
太く、弾力のある血管も多くあります。
撓側皮静脈への穿刺は、神経損傷の可能性があるため、手首から握り拳一個分中枢側で穿刺しましょう。
尺側もしっかり見ると、意外に太い血管が見つかります。
指先に全神経を集中させ、血管の感触をとらえましょう。
成功率の高い肘正中皮静脈はできる限り残しておく
肘正中皮静脈は、太く弾力があり、うっ血が確認しやすい血管です。
見えなくても、太く弾力があるため見つけやすいのが特徴です。
しかし、この部分で静脈路確保を失敗してしまうと後がなくなってしまいます。
そのため、まずは出来る限り末梢でトライすることをおすすめします。
ただし・・・
- 確実にできるという自信がある。
- 早くアドレナリンを入れなければならない。
このような場合では、一発目から狙っていくのも全然ありです。
傷病者にとって、どちらが有益なのか判断していきましょう。
静脈路確保の判断を考えよう
高齢者やCPAの場合、ほとんどが難しい血管にトライすることになります。
病院研修のようにうまくいかないでしょう。
そして、静脈路確保にとらわれてしまい、なかなか現場出発できない現場をたくさん見てきました。
下記を参考に、判断基準を自分なりに考えてみましょう。
傷病者の状態と病院までの距離
想定を読んで、自分なら静脈路確保を行うか考えてみましょう。
CPA事案、傷病者の初期波形はVF、ショック1回実施。最終健常時刻は今から15分前。現場で静脈路確保するも漏れがあり失敗。3次病院までの距離は1Km。
という状況だったとしましょう。
この場合、VFの継続の有無が重要になります。
VFが継続している状況であれば、この傷病者にはショックが必要で、静脈路確保に時間を割いている時間はありません。
病院に行くことが出来れば、抗不整脈薬も投与することができます。
病院との距離も考慮すると、早期搬送が優先される事案です。
薬剤適応のCPAであったとしても、傷病者にとって今何が大切なのかを考えるようにしましょう。
静脈路確保をやらないという選択も、傷病者を救うことがあります。
CPA事案、初期波形はPEA。薬剤適応あり。車内でルート確保を試みている状況。右肘正中皮静脈のみ、うっ血が認められたため、トライするも失敗。2回目の穿刺をするため、左上肢のうっ血を確認すると、細い血管のみ確認できる状況であった。病院まであと5分。
という状況も確認しておきましょう。
トライするか迷う事案ですね。薬剤適応であり、アドレナリンを早期に投与したいところです。
しかし、この事案では1回目右肘正中皮静脈で失敗しています。
この精神的不安や左上肢のうっ血状況を加味すると、2回目の穿刺を躊躇してしまうかもしれません。
ですが、病院まで時間があり、傷病者にとって早期薬剤投与は有益です。
このことから、2回目のトライをするべき事案だと考えます。
もちろん、やらないという選択肢もあります。
傷病者の血管が細く、脆そうな血管ばかりだった場合は、病院の看護師さんに託すという選択もありです。
整った環境で静脈路確保を行い、毎日静脈路確保を行っている看護師さんのために穿刺部位を残しておくことも必要です。
しかし、失敗を恐れてトライすることを躊躇することはないように、日ごろから自信を付けておきましょう。
【血管探し】2つの訓練方法
現場で素早く穿刺部位を探すためには、日ごろの訓練しかありません。
経験を積むことで、コツがわかり先輩のようにスマートに成功させることができます。
他人の腕で血管探しをしてみよう
まずは朝、救急車の点検時に訓練をしましょう。
この時に、隊員同士で駆血し合い血管を探す練習をすることをおすすめします。
この時、見えない血管を探すことを意識してみてください。
病院研修でとにかく数をこなす
結局のところ、これが一番うまくなります。
なぜなら、プロの技術を間近で見ることができます。
どんな風に血管を触っているのか、どの血管を選択しているのかを見て学ぶことも大切だよ。
そして、実際に看護師さんからフィードバックを貰い、コツを聞き出すことで上達のスピードが上がります。
これらの事を意識しながら、とにかく数をこなして試行錯誤していきましょう。
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まとめ
今回は、救急救命士ができる静脈路確保の部位と血管探しのコツを解説しました。
静脈路確保成功の秘訣は、事前の準備です。
しっかりとした血管選びが、成功につながります。
また、病院研修で看護師さんにコツを聞くと・・・
経験数だよ‼とよく言われます。
出来る限り、病院研修で静脈路確保をたくさんやってください。
質問があればLINEからご連絡くださいませ。
今回解説したことが、実際の現場で役に立つことを願っています。
実際の画像で分かりやすく解説してもらえませんか?