腰の出っ張っている骨の名称や、のど仏の正式名称をあなたは答えられますか?
救急隊が医療機関に電話連絡する際、「上のほうを痛がっています」などと伝えると(この救急隊は大丈夫か?)と信頼を失いかねません。ここでは医学的な身体の部位の名称や方向の名称を解説します。
身体の軸と面
縦軸(長軸)
頭と足を結ぶ縦方向軸の軸で、横(水平)軸と直角
横軸(水平軸)
左右を結ぶ横方向の軸で、縦軸と直角
矢状軸(しじょうじく)
背中とお腹を結ぶ身体の前後の軸で、縦軸と横軸はそれぞれ直角
矢状面(しじょうめん)
身体を左右に切る面。左右対称で身体の中心を通る面を正中面という
前頭面(額面)(ぜんとうめん がくめん)
身体を前後に切る面で、矢状面に垂直な面
水平面
床に平行で、身体の横断面である。ちょうどCT検査でみる面
医学的な身体方向の名称
頭側(とうそく) 尾側(びそく)
縦軸上では上が頭側、下が尾側
例 「バックボードそのまま、身体移動、頭側側20センチ、いち、にー、さん!」
近位 遠位
上肢、下肢は体幹に近い方を近位(上側のこと)、遠い方を遠位(下側のこと)という。
例「右手首をリストカットした20歳女性の収容依頼です。切創は手首からやや遠位側にむかって数か所あります。どれも深くはなさそうです。」
内側 外側
横軸上の左右は内側(ないそく)外側(がいそく)。
腹側 背側
矢状軸上では前と後。体幹部では腹側、背側。
浅部(せんぶ) 深部(しんぶ)
皮膚に近いことを浅部、その逆を深部という。Ⅱ度熱傷の際に用いたりする。
体表の線の名
前正中線
胸骨の真ん中を通る縦線
鎖骨中線
鎖骨の中央を通る縦の線
乳頭線
乳頭を通る縦の線
胸骨中線
胸骨の中央を通る縦の線。前正中線と同様。
肩甲線
肩甲骨下角を通る縦の線。
脊椎(柱)傍線
脊柱の横突起を通る縦の線。
ヤコビー線
両腸骨稜を結ぶ線で,第4腰椎棘(きょく)突起あるいは第4~5腰椎間を通る横の線
前腋窩線
中腋窩線の前方にあり, 腋窩の前縁を通る縦の線。十二誘導心電図で用いる。
中腋窩線
腋窩の中央を通る縦の線。仰臥位の場合右心房は中腋窩線付近に存在する。十二誘導心電図で用いる。個人的には、仰臥位だと予想以上に背側にあるイメージ。
後腋窩線
中腋窩線の後方にあり,腋窩の後縁を通る縦の線
関節運動
屈曲 伸展
矢状面上で行われる動きで,曲げ伸ばしをいう。ダンベルで上腕二頭筋を鍛えるアレ
外転 内転
前頭面上を正中矢状面から遠ざける運動を外、,近づける運動(上肢または下肢が身体の中線方向に戻ってくること)を内転
外旋 内旋
前を向いていた面が外側を向く動きを外旋、内側を向く動きが内旋。解剖学的基
本体位では下肢の爪先は前を向いている。この爪先が外側を向くのが外旋で、内側を向くのが内旋。
例 「80歳女性、転倒での救急要請。右の下肢は外旋しており、下肢長差あり。」(高齢者の大腿骨頚部骨折疑い収容依頼の例)
外から触れる骨の突出部
大泉門 小泉門
頭蓋冠の一部が結合組織のまま残っている部分で、新生児、乳幼児に認められる。前頭骨と頭頂骨の間にある大泉門は生後2年頃までに閉鎖し、頭頂骨と後頭骨の間にある小泉門は、生後4~5ヵ月までに閉鎖する。したがって,この時期には頭蓋を強くつかまないようにする。
外後頭隆起
後頭の正中で耳介の高さにある骨の隆起。
乳様突起
側頭骨の一部で、外耳の後ろに下向きに著しく突出している部分。
※名前的に胸の近くにあると勘違いされやすいですが、耳の後ろです。
オトガイ
下顎の前方突出によってできた隆起。あごのこと。アッパーするときに狙う箇所。
甲状軟骨
喉頭を形成する軟骨の1つで、「のど仏」あるいは「アダムのリンゴ」といわれ,前頚部で
前方に突出する隆起。別名「のどちんこ」笑
頸動脈を触診するときここから沿わせていくので重要!
輪状軟骨
喉頭を形成する軟骨の1つで、甲状軟骨の下方の隆起。
心肺蘇生時、輪状軟骨を圧迫すると誤嚥防止に期待できる。この、胃内容の逆流を予防する処置をセリック法という。窒息などで送管困難時は甲状軟骨と輪状軟骨の間を緊急切開する。
出典 http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/023/157/51/N000/000/001/144963556783574200178.jpg
胸骨角
胸骨柄と胸骨体が結合するところで,前方が凸になって屈曲しているので隆起として触れ
る。この高さの肋骨が第2肋骨である。十二誘導心電図を貼るときの目印になる。
出典 http://tsugu.private.coocan.jp/page/ECG.pdf
鎖骨と胸骨付着部のすぐ下に第一肋骨があり,第二肋骨との間が第一肋間ですが,個体差もあり, わかりにくいことが多い。 胸骨角(胸骨柄と胸骨体の間のでっぱり)に第二肋骨が付着しているので,その下が第二肋間となり, そこから数えると間違えにくい。
肩峰
両肩の先端をなす肩甲骨部分をいう。
肩甲骨下角
いわゆる天使の羽。左右の肩甲骨下角を結んだ線は,第7胸椎の棟突起の高さに相当する。
隆椎
頭蓋骨底部から背部の正中線を指で下方へたどると、容易に触れる最初の棘突起を隆椎といい、第7頚椎である。
Q.第7頸椎は何ですか?A.隆椎
剣状突起
胸骨の下端の突出部分で肋骨弓を正中までたどることにより、剣状突起に達する。
いわゆる「みぞおち」胸骨圧迫の際、ここを押さないように注意。
前上腸骨棘
腰の出っ張り。腰に手を当てたとき、一番触れれる骨。高エネルギー外傷ではここを圧迫して骨盤骨折の判断材料にする。バックボード固定の腰部ベルトは前上腸骨棘にかける。
腸骨稜
腸骨の上端を示す。左右の腸骨稜を結んだ線をヤコビー線といい,第4と第5腰椎間に相当
する。
後上腸骨棘
腸骨と仙骨との結合点。
鼠径靫帯
大腿と体幹の境界を示す。大腿静脈を穿刺するときは鼠径靫帯よりも末梢で行う。
まとめ
上に出てきた用語は病院連絡や医師への報告で使います。国家試験対策だけでなく、生涯使えるので覚えておいて損はないです。忘れたらここのページをブックマークして思い出してもらえると光栄です。
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