こんにちは、空飯です。
血液分布異常性ショックには神経原性ショック、敗血症性ショック、アナフィラキシーショックの3種類があります。
消防士、救急隊員の皆さん。
それらの特徴と処置、どのような症例がなるのか答えることはできますか?
ここでは特徴と症状、救命士(救急隊)による処置、治療を説明します。
現役救命士、救命士を目指す救急隊員、消防士の方に見て欲しい記事です。
CPA前静脈路確保(ショック)基本プロトコール
出典 https://www.fdma.go.jp/emergency_rescue/kyukyu_kyujo_tuchi/2014/20140131-1.pdf
もくじ
血液分布異常性ショックとは?
血管抵抗の減少が主因。
血管の抵抗が減少することは、末梢血管の拡張を意味しております。
末梢血管内容量(全体の血液量の約70%をプール)が増加した結果、相対的な血液量が不足に陥り、血圧低下、重要臓器の循環不全が出現します。
神経原性ショック、敗血症性ショック、アナフィラキシーショックの3種類をまとめて血液分布異常性ショックと言います。
血液分布異常性ショックにはどんな種類がある?
- 神経原性ショック
- 敗血症性ショック
- アナフィラキシーショック
以上の3種類です。
ちなみにショック状態は普通末梢(手先)が冷たくなります。
しかし、血液分布異常性ショックの時は温かいことがあります。
ホースが100mmに拡張してしまうのには原因があります。
原因は3種類に分けることができます。
原因1「神経原性ショック」
原因2「敗血症性ショック」
原因3「アナフィラキシーショック」
【原因1】神経原性ショックとは
神経系の循環調節機能の破綻による血管抵抗の減少。
原因の例 脳幹損傷 脳血管障害 脊髄損傷など
交通事故や高齢者の転倒、高所墜落などで頚椎損傷などが疑われるとき。
そんな現場で除脈・血圧低下が観察されれば神経原性ショックを疑いましょう。
(もちろん頸損だけではないですが)
逆に交通事故や高齢者の転倒、高所墜落は神経原性ショックになりうるので
「接触時橈骨動脈は触れるか?」「徐脈ではないか?」
を意識しておくといいです。
もしそれらが観察されれば「静脈路確保」が必要です。
出動途中に「神経原性ショックになってるかもだからIVの準備すぐできるようにな!」
と隊員に伝えておくとスムーズな現場活動になりますね。
(一般救急隊員は出血がなければショックはないと思っていたりする。)
神経原性ショックは脳や脊髄がやられると循環調節機能が馬鹿になるので起きます。
【原因2】敗血症性ショックとは
病原自体や病原体が生産する毒素への曝露により、サイトカインを中心とする炎症性メディエーターが産生される各種血管拡張物質の作用による血管抵抗減少。
つまり感染し、発熱して最終的に陥る状態です。
「発熱」「血圧低下」「意識障害」が観察されれば敗血症性ショックを疑います。
通報で「発熱・意識障害」というキーワードがあれば隊員に静脈路確保の可能性、ショック体位、酸素投与、冷却の準備を伝えておきましょう!
大事なキーワードが発熱です。
腹痛→発熱→敗血症性ショック
尿路感染症→発熱→敗血症性ショック
風邪症状→発熱→敗血症性ショック
発熱で血圧が下がったら敗血症性ショックの可能性が高いです!
まずは橈骨動脈が触れるか確認することが大事です。
もし触れずに敗血症性ショックを疑ったなら高濃度酸素投与してショック体位、静脈路確保の指示要請をしましょう!
シバリングがなかったら冷却も忘れずに。
【原因3】アナフィラキシーショックとは
薬物や異種タンパクにより、肥満細胞からのヒスタミンをはじめとする各種メディエーター(ロイコトリエン PGなど)の放出が促され、上気道浮腫や血管透過性の亢進、末梢血管の拡張による血管抵抗の減少。
「蜂に刺されて意識障害」「食事をとった後に体が赤くなり意識障害」などの通報内容ではアナフィラキシーショックが疑われます。
隊員に静脈路確保の可能性、ショック体位、酸素投与の準備を伝えておきましょう!
ハチ刺傷はアシナガバチ>スズメバチ>ミツバチの順に多い。
福田健 編:総合アレルギー学 改訂2 版. 南山堂 2010. p.609-17.
短期間に2 回刺傷されるとアナフィラキシーを生じやすい。
Pucci S, et al. Allergy 1994; 49: 894-6.
食べ物は卵、蕎麦、ピーナッツなどにアレルギーを持っていると発症する可能性があります。
ちなみにアレルギーを摂取(ピーナッツを食べた)した後に運動をするとアナフィラキシーを増幅重篤化させる因子と言われています。
そういった人はエピペンを所持している可能性があるので関係者から有無を聴取することが超重要です!
「ハチ・食べ物」「血圧低下」「意識障害」が観察されればアナフィラキシーショックを疑います。
大事なキーワードが「蜂に刺されて」「食べた後に…」です。
アナフィラキシーの場合は呼吸困難も出現します。
まずは呼吸が正常か判断し、アナフィラキシー疑いなら迷わず高濃度酸素投与しましょう。
次に橈骨動脈触知の有無、全身観察でショックを判断。
ショック体位、静脈路確保の指示要請をしましょう!
もし、呼吸が切迫するようであれば遠くの三次病院へ搬送よりも気管挿管、アドレナリン投与ができる直近の病院へ行った方が良いです。
緊急を要するのであれば静脈路確保はもちろん搬送しながら行うべきです。
最悪搬送を優先した方がいい場合もあるでしょう。
アナフィラキシーショックの原因
- 鶏卵>乳製品>小麦>蕎麦>ピーナッツアレルギーなど
- 蜂刺(1割がアナフィラキシーを起こす。特にお盆に多い)
アナフィラキシーショックの特徴と症状
- 紅斑
- 蕁麻疹
- 掻痒感(皮膚 口腔 咽頭)
- 鼻水
- くしゃみ
- 頻脈
- 悪心
- 嘔吐
アナフィラキシーショックで心停止になる3つの原因
- 血液分布異常性ショック
- 上気道浮腫による窒息
- 下気道浮腫による低酸素血症
血液分布異常性ショックでは血圧の低下が原因で心停止となる。短い間隔での血圧測定が大切。
上気道浮腫による窒息は気管牽引、陥没呼吸が浮腫進行の判断材料となる。
下気道浮腫による低酸素血症では呼気性喘鳴、呼気延長などが特徴となる。
アナフィラキシーショックを疑ったのなら心停止に備えることは重要です。
血圧がどんどん下がってきたらいよいよ心停止となります。
その徴候を見逃さないためにも短い間隔(3分ごと)で血圧を測定しましょう!
他にも気管牽引や陥没呼吸はないか?呼気性の喘鳴が強くなってないか?
これらを意識し活動し、心停止に備えることが重要です。
除細動パットの準備、BVMの準備、可能であれば挿管(LTなども)の準備、静脈路確保とアドレナリン投与の準備が大切です。
エピペンについて
適応は以下のすべてを満たすこと
- エピペンの処方を受け、所持している
- 自己注射できない
- 皮膚症状:全身性掻痒感 赤斑 蕁麻疹 血管浮腫
- 呼吸器症状:明らかな鼻閉 喉頭・咽頭の掻痒感/絞扼感 嗄声 犬吠様咳そう 嚥下困難 喘鳴 チアノーゼ 呼吸停止
- 循環器症状:血圧低下(通常の血圧より軽度低い場合も含める)
エピペンの使用方法
引用 http://www.pref.shiga.lg.jp/mccs/shinryo/hokenshido/files/h26-epipen-guidance-slide.pdf
- 大腿の頭側1/3の側方と前面の間に打つ。
- エピペンはグレードⅢからⅤで使用。
- エピペンの2度打ち禁止。
エピペンの副作用
- 血圧正常時に打つと超高血圧になる。
- 打ってはいけないところに打つと壊死する。(例:指先に打ち血管収縮→結果壊死)
こちらのデータがとてもわかりやすいです!
アナフィラキシーの画像は下記のリンクから引用させていただきました。
まとめ
血液分布異常性ショックは通常のショックと違い冷感がないことが多いのが特徴です。
「冷感がない=ショックでない」と言いきれないのはこのためです。
四肢が温かいショックもあり得ます。
また、ショックの多くは頻脈を呈しますが、頸髄損傷などによる神経原性ショックは除脈を呈します。
いずれにせよ、全体的な判断がショックの鑑別には必要です。
参考
消防機関における自己注射が可能なアドレナリン(エピネフリン)製剤の取扱いに関する検討会報告書
ポンプ車の放水を例にたとえます。
普段50mmや65mmホースを使って運用していますよね?
血液分布異常性ショックにになるとホース径がどんどん拡張していき、いずれは100mmホースになります。
すると、水圧が足りなくなり水が火元まで届かない不具合がおきます。
それが体の中で起こってるってことです。
100mmホースになってしまう原因は3種類。
これから説明していきます。